幽霊船。アーセルム号。
乗っていた船の魔導器が突然壊れてしまった理由を探るため、ユーリ、ラピード、レイヴン、そしてリタの4人はアーセルム号の中を調べていた。

「あの…さ、何時まで此処に居んの?」
後ろを歩くリタが、先頭のユーリに問い掛ける。ユーリは首を傾げながら言った。

「そりゃ、魔導器が壊れた理由を知るまでだろ」
「あれ?もしやリタっちは、おばけが怖いとか?!」
そこにすかさずレイヴンが首を突っ込んで来る。このおっさんもどきめ。
「怖い訳無いでしょ!?馬鹿じゃないの!!!」
力いっぱいリタが叫んだ。…ユーリが苦笑している、レイヴンは気持ち悪い位にたにたと笑ってた。何なんだコイツ等。
ムカついたらしくリタがレイヴンを渾身の力で殴った。リタの拳がレイヴンの体にクリーンヒットする。
「痛っ!何すんのよ、リタっち」
「うっさい!!黙れ!!」
怒鳴り散らして、一番安全なラピードの傍を歩く事にした。ラピードは主人(ユーリ)を気遣う様に眺めてから歩き出す。


そこから暫くしてからだった。
レイヴンが盛大に叫んだ。
「あー!あそこに首の無い幽霊がー!!」
棒読みの、如何にもわざとらしい言い方だ。ユーリが溜め息を吐いてレイヴンに注意を促そうとして――…。

「きゃあああっ!!!」

リタが盛大に叫んだ。次の瞬間、近くに居たラピードに抱き付いている。――ラピードが困った顔をしていた。


「あ、わりぃ。鏡だった」
直ぐにレイヴンがにやりと笑う。…どうやらコレが狙いだった様だ。
「あ…あんた……殺す!!!」
リタが無駄に詠唱をし始めた。浮かんで居る術式からしてファイアボールだろう。レイヴンが慌てて弁解した。

「悪かった!マジ悪かったって、リタっち!!!」
「うっさい!!一回死ね!!!」

完全にキレてる。ああなったらもう止めれないだろう。ユーリはリタとレイヴンの行く末を見守る事にした。
だがその時。…鏡に何か別の物が見えた。まさか本当に幽霊……。


「リタ!本当に出だぞ!!」
「本当にって…何が!?」
怒り狂ったリタが今にも魔術を奮おうとしている。ユーリは剣を抜きながら言った。

「幽霊だ!!!」
その瞬間。…リタの動きが止まった。
彼女が鏡を見る。レイヴン鏡を見た。…確かに幽霊――正確には魔物だが――が映って居る。


「……きゃぁああああっ!!!」

リタはその場で座り込んでしまった。入れ違いにレイヴンが立ち上がる。
リタは当分動きそうにない。仕方無い。3人で倒す事にした。

幸い魔物には直ぐ勝つ事が出来た。向こうの数が少なかったからだ。
腰を抜かしたリタに、レイヴンが手を貸す。

「立てる?リタっち」
「…無理」
珍しくしおらしくリタが言った。…本気で怖かった様だ。
仕方無い。とレイヴンが呟きながら――次の瞬間には彼女を抱き上げていた。

「ちょっ…何すんのよ!変態!!」
「変態じゃないよーだっ。
俺はリタっちを気遣って…」
「死ねぇえっ!!!」
リタがレイヴンの胸の内で暴れるが、レイヴンは苦笑したままリタを無視して歩き出した。どうやら下ろす気は無いらしい。

仕方無くユーリとラピードもそれを追い掛けた――。



*恐怖は最高の演出となり






08-08.11



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