「あんた…これは盛大にやったわね…」
リタの呟きに、エステルは苦笑したまま何も言わない。
エフミドの丘を無事に抜けた一向は、テントを入手したという事もありこの近くで野宿の支度をしていた。
料理当番は4人(と1匹)が順番にやっているのだが、今日はたまたまエステルの番だったのだ。
そして彼女は…やってしまった。
サンドイッチの中に入れる筈だった卵焼きを盛大に焦がし、塩加減を間違え、挙げ句入れすぎた塩を誤魔化す為にパンに砂糖を振りかけた始末
だ。いくらパンに何かを挟むだけのサンドイッチと言っても、これは流石に……。

「ご、ごめんなさい…!」
エステルが頭を下げて全員に謝った。
「別に謝って欲しい訳じゃないんだけど」
「そ…そうそう!僕なら全然気にしてないから、別に良いよ」
リタの言葉に便上してカロルが笑った。
彼はエステルの作ったサンドイッチを思い切り口に頬張り――。

走って水場に行ってしまった。

「バカっぽい…」
リタが溜め息を吐いてサンドイッチを口に運ぶ。…彼女の顔色が真っ青になっていくのが分かった。

「ちょ、ちょっと、エステリーゼ!!
何やったらこんな激マズサンドイッチが作れるのよ!?」
「わわっ…ごめんなさい!!」
激怒するリタにエステルが慌てて頭を下げた。

そんな中でユーリだけが平然とサンドイッチを食べて居る。彼を見たリタが、一瞬だけ驚いた顔をした。

「あ、あの。ユーリ。無理して食べなくても…」
エステルの言葉に、ユーリはちらりとエステルを見た。
彼はサンドイッチを頬張りながら言う。

「ま、確かに味はアレだな」
「じゃあ食べない方が…」
「お前、サンドイッチ作ったの初めてだろ?」
ユーリの言葉にエステルが目を丸くした。確かにその通りだ。
「…そ、そうですけど…」
「なら、失敗くらい仕方ねぇだろ。
リタだって料理の1つや2つ、失敗するだろ?」
「…分かったわよ、食べれば良いんでしょ?エステリーゼの頑張りを無駄にしない為にね」
リタが諦めた様に席に座ってサンドイッチを食べ出した。ユーリは相変わらず平然とサンドイッチを食べて居る。


「あのっ…ありがとうございます」
ユーリにぺこりと頭を下げた。
彼はちらりと此方を見て、にっと笑う。

「次は美味しいサンドイッチ作ってくれよ」

「…はい!」

ユーリの言葉にエステルは満面の笑顔で頷いた。



*真心込めて






08-08.12



Back