エアルが暴走しているかもしれない。 そんな情報を当てに、ユーリ達はケーブ・モック大森林にやって来ていた。 ケーブ・モック大森林は熱帯雨林の為、雨がよく降り視野が悪いのだが、エアルの有る場所に行く為には大きな木の上を歩かないといけない。ユ ーリ達は慎重に木の上を行き来していた。 「これ…完璧に獣道じゃない…」 「みてーだな」 リタの言葉をユーリが軽く受け流した。彼女は先程からぶつぶつと文句を言いながら木の上を歩いている。その隣をエステルが苦笑しながら歩い て居た。 「まーぁ仕方無いんじゃない?この道でもマシな方みたいだし!!」 軽薄に笑うレイヴンが言った。確かに大森林の大きな草木を掻き分けて進むよりかはマシかもしれないが…。 その時だった。ユーリの直ぐ後ろを歩くカロルが腰を抜かして叫んだ。 「ででで出たぁあああ!!」 ユーリの後ろで、腰を抜かしたまま立てないカロル。彼は虫が嫌いらしいので無理も無い。 視線先を見上げると、虫の形をしたモンスターが数多く集まって居た。 「ちょっと!こんな足場の悪い所で戦う訳!?」 リタの言葉も最もだ。木の上まで大分上がって来てしまっているので、動き辛い上に慎重に動かなくてはならない。 それでも倒すしかないのだ。 「しゃーねぇだろ!行くぞ!!」 走り出したユーリが叫んだ。エステルが遠くで詠唱を唱えるのが聞こえる。…ユーリの間合いにラピードが飛び込んだ。援護をしてくれる様だ。 遠くではリタが溜め息を吐きながらも詠唱をするのが見える。カロルは腰を抜かしたまま動けないらしい。虫が嫌いなのだから仕方無いだろう。そ れに無理に動く必要も無い。今は休んで貰おう。 「シャープネス!」 エステルが叫ぶと同時に、魔術が体を包み込んだ。補助魔術の様だ。 ラピードが閃空犬を使うのが見える。自分も幻狼斬でラピードの応戦に出た。 「スパイラルフレア!!」 詠唱を完成させたリタの魔術が、敵の殆どを粉砕した。流石は天才少女だ。 今の魔術で粗方モンスターが片付いた。後はラピードど力を合わせて後のモンスターを倒すだけだ。 「俺も加勢するぜー」 呑気な事を言いながらレイヴンが弓を射る。――弓の威力にモンスターの一体が倒れた。男はにやりと笑い、直ぐに次の弓の準備をする。 彼に負けている場合ではない。ユーリも直ぐに攻撃を始めた。 だがレイヴンが攻撃を始めて直ぐ。…モンスターがエステルの背後に入った。マズい。一目散にエステルの方に走り出すが、どう考えても間に合 わない――。 「エステル!!」 叫んだ事により、エステルより先に近くに居たリタが気付いた。 彼女もまた、エステルに向かい走り出す。其処で漸く彼女が危機に直面している事に気付いた。 リタがエステルを庇う様に立ちふさがると同時、モンスターが攻撃を仕掛けた。 「っ――」 彼女が呻きを上げるのが聞こえた。 エステルを狙った魔物の攻撃は、エステルを庇ったリタに当たったのだ。 「リタ!!」 慌ててエステルが彼女に駆け寄り、治癒術を使う。リタを攻撃した魔物は間合いに入ったユーリが蹴散らした。 「大丈夫かー?」 「ワン!!」 遠くで戦闘をするレイヴンが叫んだ。それに便上する様に、ラピードが吠える。 ユーリはとりあえず肯定の返事を返し、エステルとリタに近付いた。 「大丈夫か?」 「はい。傷はとりあえず癒やしました」 「この位平気よ」 そんな事を言っている位なのだから、もう大丈夫なのだろう。レイヴンとラピードが最後の敵を蹴散らすのを見ながら、ユーリは思った。 ※※※ リタに異変が生じたのはそこから暫く歩いてからだ。 息切れと冷や汗を掻きながら歩いてる。時々こちらに倒れて来る事も合った。 「おい、マジで大丈夫か?」 「だい…じょ、ぶ……」 苦しそうにリタが返事を返した。…どう考えても平気には見えない。 「リタ、どこか悪いの?」 エステルが駆け寄り、リタの体を調べようとした、その瞬間――。 「まぁた来たぜぇ!!」 レイヴンが叫び、弓を構えた。その視線先には――またもやモンスターの群れ。 「くそっ!こんな時に…」 ユーリが慌てて剣を抜く。ラピードも武器を加え一足先に敵を倒し出した。 「カロル!リタを頼む!」 「へっ!?…あ、うん!!」 カロルが慌ててリタの傍に走った。彼女は荒い息でその場に座っている。 「リタ、大丈夫?」 カロルが心配するが、彼女は答えを返さなかった。相当弱っている様だ。とりあえずリタを戦闘の邪魔にならない場所に運び、カロルはその傍に座 った。 一息着いたと同時。 「ぎゃああああっ!!!!」 「カロル!?」 見ると、カロルとリタの後ろからもモンスターが来ていた。…何でこんなに数が多いんだ。 腰を抜かしたカロルの隣、リタが荒い息で溜め息を吐きながらその場を立った。 「リタ!無理しないで!!」 「無理…なんか……し、て…ない…」 彼女はそう言いながら魔術を放った。 やはりその腕は天才だ。敵の殆どが攻撃を食らっていた。 だが魔術の反動により彼女の体がふらつき、後ろに倒れる。…リタの後ろは…。 「「リタっ!!!」」 エステルとユーリが同時に叫んだ。ラピードが雄叫びを上げる。 彼女はバランスを崩して、足場の木から落ちていった――…。 「ラピード!」 「ワンっ!!!」 すぐさまユーリから命令を受けたラピードが足場の木から降りていく。 「よっとな」 「あ、おっさん!!」 そんなリタとラピードを追うようにレイヴンもまた足場を落りていった。…残された3人は木の上から彼女達の安否を心配するのみ。 「おっさん!リタは?」 木の下に向かって大きく叫ぶと、下から声が返って来た。 「大丈夫だ!! それにあんたの愛犬も一緒にいるぜぇ」 「ワン!!」 …どうやら3人共無事の様だ。 「別の道探して其処まで行くから、そこから動くなよ!!」 「りょーかい」 「ワン!!」 2人の返事を受けてから、ユーリは直ぐに残ったモンスターに切りかかった。カロルも3人だけと云う状況を理解してか、リタの事に責任を感じて か、どちらかは分からないが武器を持ち戦いだす。 幸いレイヴンとラピードが殆どなぎ倒してくれていたので、数も残り僅かだ。ユーリ達は急いで敵を倒した。 ※※※ 「ま、待つしかないか」 レイヴンはそう呟き、草の下に腰を下ろした。ラピードも既に座っている。 彼の腕の中に居るリタはどうやら気絶している様だ。顔色が悪いまま動かない。 「よっと」 レイヴンは服の内から小さなポーチを出した。…ラピードが此方だけをじっと見つめている。変な事をしない様に見張っている様だ。 「心配しねーでも変な事はしないって。これ、ポイズンボトル」 レイヴンはそう言ってポーチからボトルに入った液体を取り出した。ラピードは欠伸をして、それでもレイヴンをじっと見つめている。…全くと言って良 い程信用が無い様だ。苦笑した。 仕方無くリタを起こす。彼女の体を揺すると、小さくだが目を開いた。浅い気絶だった様で直ぐに起きたのだ。 「飲めるか?」 ボトルをリタの口に近付け、口の中にゆっくりと流し込む。彼女は一口だけだったが飲み込んだ様だ。 ポイズンボトルを口から離し、リタの頭を優しく撫でた。彼女が心地良さそうに目を閉じる。…やはり毒に犯された事によって体が疲れているのだろ うか。何時もならこんな事やった時点で即座に殴り掛かってくるのに。 リタから規則正しい寝息が聞こえた。 …しまった。 膝を枕にして寝られた。動けない。 「わふっ」 ラピードが一声鳴いたとほぼ同時だ。遠くからユーリ達が走ってこちらに向かって来るのが見えた。 「おーい、リタっちぃ。起きてー。 こんなとこ見られたくないでしょ!」 体を揺すってみたが彼女に起きる気配は無い。頬をつねったり強く揺さぶったりしても駄目だった。 「…邪魔しちゃ悪かったか?」 案の定。それを見たユーリが苦笑しながら言った。カロルが意地悪気に笑っている。そんな中でエステルが傍に駆け寄って来た。 「治療ならさっきしたぜぃ。…ポイズンボトルだけどな」 「あ、本当ですか?有難う御座います」 どうやらエステルはこの空気に気付いて居ない様だ。…彼女が天然で本当に良かった。 「ま、リタがこんな調子だし。今日は此処で休もうぜ」 ユーリがその場に腰を下ろした。カロルとエステルもその場でしゃがみ込む。 リタはまだ当分起きそうに無い。頭を撫でながらレイヴンは優しく微笑んだ。 *安らぎの中で、甘い情を視た ☆★おまけ★☆ カロル:昨日のリタはすごかったね! リタ:…何がよ カロル:レイヴンに膝枕してもらって…すんごく快適そうに寝て… リタ:ふんっ!(殴) カロル:痛っ!! リタ:あたしがおっさんに膝枕!? あんた夢でも見たんじゃないの??有り得ないっつーの!!! ユーリ:すっかり元気そうだな エステル:はい。…リタが無事で本当に良かったです レイヴン:そーそー!元気が一番よ。がっはっはっ!! カロル:本当なのに…。 08-08.14 おまけはスキット風。 因みにこれ大森林の名前が分からなくてわざわざゲーム開いてまで確認して書いた有る意味思い出の小説← Back |