「お、俺が悪かった。悪かったからっ…!!」
震えるヒスイにもう一度殴り掛かる。後に腕を掴み爪を立てた。
苦痛に歪む彼の顔が普段からは想像も出来ない様なぐらいに歪んでいて、そして、綺麗だ。
…とはいえ、俺だって最初からこんなことしてる訳じゃない。
先に突っ掛かってきたのはヒスイだ。

突然八つ当たりと称した軽いビンタを食らい、たまにはやり返してやろうと軽くビンタを返したのが、はじまりだった。
俺としては軽く叩いたつもりだったんだけど、割と痛かったみたいだ。
――何しやがると怒声を響かせつつも肩を震わせているヒスイを見ていたら、


止まらなく、なった。


「ヒスイが悪いんだよ」
本当は誰より弱くて、脆い癖に。
少しでも強くみせよう強がったりするから。
だから、叩いた刹那に見えた怯えた様な瞳に、俺は吸い込まれた。
もっとその顔を見たいという、自分でもよく分からない黒の感情に支配され、それは次第に暴走していき、此処まで来てしまった。
こうなったらもう俺としても引き下がれない。反面自棄だ。けれどもう反面は――俺の意思で、ヒスイに危害を加えている。

「ヒスイ」
毛先を引っ張り、顔を近付ける。
ヒスイの瞳は完全に動揺していた。だが俺と目を合わせるのが嫌なのか、ずっと横を向いている。
ぱちんと乾いた音を響かせもう一度頬を叩くと、痛みの反動でヒスイがこちらを見た。
「…し、んぐ」
「ヒスイ」
微笑み、優しく腕に爪を食い込ませた。


誰かの為にこんな顔を見せることも無い。
俺の前でだけ、こうしていればいい。

(もう、離さない)



*優しい傷み
(他人を殴る事が多い人は、自分が殴られる事に慣れていない事が多い)

(ヒスイが、まさにそれだ)






10-01,15

携帯で書いてた小説なんで短い、です。



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