※ヒスイがおにゃのこ
※グースのケダモノイベント後((




「…あのさ……ヒスイ」
何時もなら名前を呼べば嫌々ながら振り返るヒスイだが、今日ばかりはそうもいかない。彼はそっぽを向いたまま黙って歩き続けていた。
「その…本当にゴメン。覗くつもりなんてこれっぽっちも無かったんだ」
ぽつりと呟くと、ヒスイの代わりにベリルが振り返った。コハクの横に並ぶ彼女は舌を出しながら叫ぶ。
「何が覗くつもりなんてなかった!だよ!!シングのケダモノ!!!」
…さっきから俺はケダモノ扱いだ。でも否定は出来ない。
カルセドニーがヒスイ達と一緒に居るかもしれないという危機感から、俺はそこが女湯だって事も忘れて――彼女達に加え、ペリドットが入浴してい
た露天風呂に何の躊躇いもなく侵入した。そしてこのザマだ。
弁解のしようも無く、項垂れたまま謝り続けるしかなかった。

「ヒスイ、ごめんってば」
ベリルはまだ俺を罵る程度で済んでるけど、問題はヒスイだ。
一瞬だったとはいえ俺に裸を見られた事が相当ショックなのか、怒れるのか、俺と口を聞いてすらくれない。先程から黙って一人で歩いたままだ。
「ヒスイだってムカつくよねぇ?乙女の裸を覗いた奴なんてさぁ」
ベリルの言葉にヒスイは小さく頷き――そして、振り返って俺を見た。

「シングのバカ」
「ご、ごめん……」
「ケダモノ」
「…はい」
ヒスイにまで言われてしまった。本当にそんなつもりじゃなかったのに……。
落ち込んで入れば、ヒスイがぽつりと呟いた。
「……と…った…ろ…」
「…へ?」
その呟きが余りに小さくて聞き取れなかった。
もう一度言ってくれるように頼めば、やや涙目になったヒスイが顔を上げる。
口を開いた彼女が先程とは豹変して、思い切り叫んだ。
「小さいと思っただろ…!!」
「え…」
何が?――と、問う前に気付いた。
何だかヒスイが可愛らしくて思わず笑ってしまう。
「思ってないよ」
「…嘘つき」
…もしかして口を聞いてくれなかったのはこれが原因だったのだろうか。
心の中でも笑ってから、顔を赤く染めたヒスイに抱き着く。
「ちょ、」
「小さいとか関係無しに、俺はヒスイが好きだよ」
…囁くと、ヒスイが耳まで真っ赤にして硬直した。それが可愛くてより一層抱きしめた。

(ヒスイ、)
(君が、好きだよ)



*小さいはコンプレックス
(そこの二人〜!街道でいちゃつくなぁ〜!!)







10-01,18



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