※強烈に病んでるリタっち




朝から具合が悪そうなのは薄々気付いてはいたが…まさか此処までとは思わなかった。

時は少し遡った戦闘中の事だ。
ユーリとジュディスが前に出て、中衛の自分は距離を取りながら敵と戦って、それを彼女が援護する。…何時もの戦闘ならそうなる筈だった。
だが戦闘中に――リタの体が大きく揺れた。
彼女の体は糸の切れたマリオネットの様に簡単に崩れていく。それを一番傍に居たユーリが慌てて支えた。


「リタ!!」

皆に驚きの声が漏れる。
リタはぐったりとした顔でユーリに抱かれていた。気絶しているのかもしれない。

その時の戦闘は結局逃走した。
その後は直ぐにテントを張り、野宿の支度をする。

――リタを抱えている少年の傍に近付いた。彼が流し目に此方を見る。
彼女は薄く目を開けては要る物の、辛そうに呼吸をしていた。…聞かなくても分かる、リタの容態はかなり悪い。

気を使ってか何か、ユーリがその場を立ち上がった。

「おっさん、リタの事見ててよ。
俺はカロル達を手伝ってくるから」

そう言ってユーリは踵を返し歩き出す。
…ああ、やっぱり彼は彼なりに気遣ってくれたのだなと思った。

「ありがとね、青年」

此方を振り返る事なく手を振るユーリに、感謝しきれない位感謝した。
それからリタの横に座って、優しく頭を撫でてやる。…安心したのか、リタが少しだけ楽そうな顔をした。

額に手を置いてみる。…熱は無い。大丈夫。
そんな事を思ってると、リタが袖を引っ張って来た。慌てて彼女の方を見る。



彼女が口にした言葉に…一瞬何を言えば良いか混乱した。


「あたし…此処に、居て良いの…?」

「…リタ」


彼女が倒れた理由、何となく分かった。
恐らくは疲労とストレスだ。
…リタは元から人と関わるのが苦手な体質だ。両親も両方共直ぐに居なくなってしまったと言うし、こんなに長く人と一緒に居るのは初めてだと思
う。
だから、例え俺達がリタの事を理解し、受け入れたつもりでも。
リタ自身が俺達を受け入れる事を躊躇い、どういう態度を取ればいいのか分からないんだ。
結局彼女は独りでそれを悩んで。
…最終的に倒れた。


目線を下にするとリタと目が合う。…彼女は瞳に涙を溜めていた。

俺達はリタに優しく接した気でいた。
けれどその優しさが、リタを困惑させていたんだ。



「リタっちが悩む事じゃないよ、それ」

編み出した答えは俺なりの答えだから、みんなに聞いて見ないと分からないけれど。



1つだけ、確信を持って言えるのは。


「おっさん達は、リタっちに居て欲しいから居て貰ってるんだよ」


リタが居なければ、きっと此処までの道のりのどこかで躓いていた。
優しく頭を撫でるとリタが少し嬉しそうに笑う。
彼女はそのまま瞳を閉じて眠りに付いた。…その寝顔が愛おしい。



「リタっちを嫌ってる奴何て、少なくともこの中には誰も居ないよ」

眠ってしまった彼女の頭を愛おしそうに撫でながら言った。



*僕は君の名前を呼ぶ




08-09.10



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