…赤黒いエアルに染まった都市。
帝都ザーフィアスは街中に茨が張り巡らし、濃いエアルに充満した死の世界になっていた。帝都の人々が逃げ出して行くのが見える。


「見えますか?姫」

アレクセイが私に笑った。…まるで悪魔の様な笑顔だ。

「これが貴方の、満月の子の力ですよ」

…そうだ。
街がこうなってしまったのは…元を辿れば私の所為だ……。
私が‘満月の子’だから…。
私が‘世界の毒’だから……。


こんな事になるのなら…フェローかジュディスに殺して貰えば良かった。


私の力は人を傷つける。
私の力は大切な仲間を…大切な人を傷つけた。





「ユーリ……っ…」


お願い。
もう助けに何て来ないで。
私の力で貴方が傷つくのは…もう見たくないよ…。


だからお願い。
もう、殺して……。



「…懲りぬ奴等だ」
アレクセイが呟くのが聞こえた。彼の視線を目で追うと――小さな人影が幾つか見えた。…ユーリ達だ……!
喜びを感じ――直ぐに悲しみを感じた。
何故貴方達は来てしまったの?
私はもう…。
私の所為で傷付くみんなを、……ユーリを…見たくない……。


涙が止まらなかった。
アレクセイが不気味に笑いながら近付いてくる。
――フェードアウトしていく視界。

最後に見たのは不気味な笑みのアレクセイと、…ユーリ達の幻だった。







*君だけは、君だけは




08-08.15



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