「ユーリ!」
青空の下で彼女が大きく手を振って要る。振って要る手の逆の手には、小さな小鳥が止まっていた。
「鳥です」
彼女は笑顔で鳥の頭を撫でてやる。ユーリはそんな彼女は微笑みながら見つめ、気付いた。

「そいつ、怪我してんな」
「へ?あ…本当ですね」

ユーリが指差した先。小鳥の羽は傷付いていた。
だからエステルの手から逃げなかったのだとユーリは納得した。普通、野生の鳥が人間に懐くなんて有り得ない。

「直ぐに治しますね」
彼女は微笑み、両手を組む。
祈りが捧げられる様に治癒術は発動した。鳥の傷は完全に完治している。
すると鳥はばたばたと羽を羽ばたかせ遠くに飛んでいってしまった。エステルが少しだけ残念そうな顔をしている。

「そんなに治癒術使って大丈夫なのか?」
そんな彼女にユーリは問い掛けた。彼女は首を傾げ、にっこりと笑う。
「私なら大丈夫です。
ユーリも怪我したら何時でも言って下さいね」
エステルは再び青空の下を歩き出す。
そんな彼女の背中を見つめながら、ユーリも歩き出した。




――出来れば、
――君に抱いてしまった恋心を、癒やしてくれないか



「…なんてな」



小さく呟くユーリの目先。
エステルはまた何かを発見した様で、きらきらと目を輝かせていた。



*出来れば、君のぬくもりで




08-08.22



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