地面に叩きつける様な乾いた音が響いた。シュヴァーンの体が簡単に床に転がる。
上を見上げると、男が冷ややかに見下ろしてきた。怒りに眉間を寄せた、恐ろしい顔だ。

「何度言ったら分かるんだ?シュヴァーン」

ああ、また同じ事の繰り返しか。シュヴァーンの表情が曇る。それでも男は言葉を続けた。



「お前は私の道具だ。
道具はいちいち口出しをしてはいけないのだよ」

そう言って、立膝で座った男が頬をひっぱたいてきた。下ろした髪を無造作に引っ張られる。

「分かったな?」

無理矢理目を合わせられた。

「…はい」

返事をするのが精一杯だ。
すると男が笑った。…歪んだ笑みだ。ああ、なんて恐ろしい顔。俺は一生この恐ろしい顔に頭が上がらないのだろうな。


「分かったなら早く行け。任務の続行だ」

漸く男から解放された。
痛む体を無理矢理起こし、逃げる様に部屋を去る。



――なぁ、アレクセイ。


あんたは俺の事を、
もう人間としては見てくれないんだな。



左胸に埋められた魔導器の事を思うと、失った筈の心臓が痛んだ。



*貴方が俺を見る目は、あの日から一転した




08-09.01



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