「…あの」
「……大丈夫だ、エステル。言いたい事は分かってる」

鞄の中を見ながらエステルとユーリが呟いた。そんな2人を神妙な顔を見、ジュディスが近付いて来る。

「どうしたの?2人してそんな顔しちゃって」

「あ…ジュディス」

「まぁ…これを見れば分かるぜ」

ユーリが手招きをしてジュディスを呼んだ。彼女は不思議そうな顔で此方に近付き、ユーリが指差している鞄の中を覗く。


「…あらあら」

鞄の中にグミや武器が入っているのは当たり前なのだが――‘食材’が1つも見当たらなかった。どうやら朝に使い果たしてしまったらしい。


「どうするの?今夜の食事」
ジュディスが首を捻りながら訪ねた。
ユーリがため息を吐きながら立ち上がる。
「とりあえず、カロル達に事情説明してくるわ」
彼はそう言って、まずカロルとラピードに近づいた。
軽く事情を説明すると、カロルから不満の声が上がる。…まぁ、仕方ないと言えば仕方ないが。

「1つも無いの?」
「あぁ、すっからかんだ」

「…お金は?」

「有るけど、近くに町がねーだろ」

その言葉にカロルが、がっくりとうなだれた。溜め息を吐いては居るが一応納得はしてくれた様だ。
「何だ何だぁ?コレ、なんの騒ぎよ」
カロルがうなだれているのを見たレイヴンがへらへらと笑いながら近付いて来た。レイヴンにも事情を説明する。…彼の表情が凍り付いた。

「…マジ?」
「ああ、本当<マジ>」

ユーリが真顔で言うので、どうやら本当だと理解したようだ。
レイヴンが唸り声を上げながらあちこちをふらふらし始めた。…木の木陰で本を読むリタが苛立った顔をしているのが分かる。


「あーっ!!もう、あんたウザい!!!」

激怒したリタがレイヴンに向かって魔術を発動させた。…見てるのが痛々しいくらいにレイヴンに魔術がヒットする。
苛立っているリタを刺激しない様に近付いた。刺激したら此方にまで魔術を投げられるかもしれない。…まるで爆弾だ。


「リタ」
「何よ」

明らかに怒りに顔を染めたリタが顔を上げる。ユーリは慎重に事情を説明した。
しかし、彼女の反応は思ったより薄かった。
「ふぅん」
その一言で片付けて、再び本に目を通し出す。…彼女は納得してくれたのだろうか。
立ち去ろうとしたらリタが此方を向いた。
彼女は笑いながら言う。


「食事が無いなら、グミでも食べてれば?」

何ともリタらしい考えだ。苦笑しながら頷いた。
彼女が再び読者に熱中するのを見届けながらリタの傍を離れる。
…リタの魔術をフルに食らったレイヴンが、地面に寝そべって気絶していた。ご愁傷様としか言い様が無い。
再びエステルとジュディスの所に戻ると―――。




「はい、パンなら持ってたわ」

ジュディスがそう言って笑いながらパンを差し出して来た。どうやら彼女が独自に食材を持ち歩いて至らしい。流石ジュディス。何時も準備が良い。
苦笑しながら頷いた。

しかし…パンを持っていたのなら、何故早く言ってくれなかったのだろうか?
ジュディスに問うと彼女は笑いながら答えた。



「だって、面白いんですもの。貴方達の反応」



…何ともジュディスらしい答えだと思った。



*一行が食糧不足になりました


ジュディスが持っていたパンは魔物から奪い取ったってオチだったんだけど流石に残酷何で止めときました←←


08-08.16



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