「君にやってもらいたい事が出来た」 ヘリオードでユーリ達を見送ったアレクセイが、陰に笑い掛けた。 ヘリオードの結界魔導器には、シュヴァーンが凭れ掛かって立って居る。 自分が此処に呼び寄せたのだ。…そう、道具は道具らしく黙って使われていれば良い。それが道具の価値なのだから。 「ユーリ・ローウェル達を監視しろ。 ――そして、来るべき時が来たら、姫様を連れて戻って来るのだ」 「…承知しました」 シュヴァーンが頷いて、街の出口に差し掛かったユーリ達を見つめた。…いや、正確に言えばアイツを見ているのかもしれない。 帝国直属の天才魔導士。リタ・モルディオ。 …アレもアレで、また使えそうな道具だ。まぁその件については、今回命令したケープ・ノック大森林の任務への働きで判断するつもりだが。 「気になるか?モルディオが」 「…冗談はよして下さい」 シュヴァーンが無表情に笑った。 …だが私が気付いた無いとでも思ったのだろうか。奴はユーリ達と接触させてから、ずっと彼女を見ている。 「そうか、なら殺すか?」 「……」 殺す、その言葉にシュヴァーンが顔をしかめた。 やはりそうだ。内心では彼女が気になって気になって仕方がないという所か。 笑って冗談だと言った。 男が少しだけ敵意を剥き出して、直ぐに無表情な顔に戻る。…あの女、コイツを動かすのには十分使えそうだな。 「まぁ良い。…あまり情は抱くなよ」 どの道、いずれはお前に姫様以外のあの女共を殺させるつもりだからな。 心で言葉を付け足して、笑いながら去っていった。 来る時が来るまでは踊らせてやる。 彼女と好きに仲を深め、愛し合うが良い。 だが来るべき時が来れば――――。 お前はあの女を殺すのだ。 最愛の女を、自分の手でな。 それまではお前もモルディオも、私の手の中で踊るMARIONETTE。 *Marionette 08-08,26 Back |