※病んでるリタっち



ヘリオードの街を歩いて居ると、見覚えのある影が合った。彼女は長椅子に座ってずっと俯いている。

「何か合ったのかね?」

気になって思わず声を掛けた。華奢な体が上を見上げる。

「…アレクセイ」

深緑の瞳がじっと此方を見つめた。…ああ、やっぱりリタ・モルディオだったか。
本人という確認を取ってから彼女の隣に腰を下ろした。彼女は何も言わず、目の前の結界魔導器を見つめながら溜め息を何度も吐いている。

「悩み事か?」
「…そんな感じ」

本日何度目か分からない溜め息を吐きながらリタが呟いた。深緑の瞳が少しだけ潤んでいる気がする。
彼女は目を伏せながらぽつぽつと事情を話し出した。

「仲間の中に、1人バカがいて」
ああ、きっとアイツだな。
レイヴン。…基シュヴァーン。お前達を監視する様に命じた、私の部下。
「バカが他の女と話してるのが嫌で…、…ちょっとだけ喧嘩して」
「仲間の所に戻り辛い、か」
「……」
リタが少しだけ頷いた。
彼女はそれから思い切り首を振って、儚い笑顔で笑う。
「あたしったら、あんたに何て話してんのよね。…忘れて」

彼女はそう言ってその場を立ち上がった。今にも走り去ろうとするリタの腕を掴み、無理矢理抱き締める。
彼女が腕の中で暴れたが、力で抑えつけた。
…成る程、シュヴァーンがモルディオに情を抱いた理由が少しだけ分かった。必死に抵抗する彼女は何て美しく、愛おしい玩具なのだろう。
試しに少しだけ遊んでみるか。
彼女の細い右手首を掴み、もう片方の開いた手でナイフを持つ。

「っ――!!」

腕の中のリタが小さく悲鳴を上げた。
そして、肉の斬れる鮮明な音が鳴る。
彼女の人差し指からは、鮮やかな赤の液体が流れていた。

「痛みは痛みでしか癒せないのだよ。モルディオ」

血の滴るナイフを持ちながら笑う。


「痛みは、痛みでしか…」

その言葉にリタの表情が曇った。
表情1つでさえ何て愛おしいのだろう。手中に玩具として置いておきたいぐらいだ。
こんな極上の玩具、シュヴァーンには勿体無い。奪い取ってやる。
顎を持ち上げて無理矢理唇を重ねた。吐息が漏れる。少し苦しいみたいだ。
重ねた唇を離すと、透明な液体が少しだけ蜘蛛の巣の様に糸を引いた。


「では、私は失礼するよ」


視界の端に、ユーリ・ローウェル達が見える。恐らく彼女を探しに来たのだろう。静かにその場を去った。



「あれ?今の、アレクセイか??」

リタに近付いたユーリ達の内、レイヴンが首を傾げて男の去っていった方を見る。リタは少しだけ頷いた。
――レイヴンが顔をしかめるが、特に何も言ってこない。何なのだろうか。


「あっ。リタ、怪我してます」

エステルが手を取り右手人差し指に祈りを捧ぐ。直ぐに彼女の治療魔術が発動した。


「…ありがと」

傷を治して貰った事に素直に喜べない自分がいる、リタが俯きながら思う。
自傷と言う甘い快楽にアレクセイに引っ張り込まれたのを、少しだけ自覚していた。



*貴方は私を自傷の沼へ、快楽と共に突き落とす



創作サイト始めた時(2,3年前)から御乱心(※発狂)と悲恋愛の小説がわたしの売りだったので(ぁ
直ぐにこう言うネタをやりたがります。お前が一番病んでるよって突っ込みは受け付けません(((


08-08,29



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