「…完全に熱だな、こりゃ」
傍の椅子に座るユーリが呟いた。…エステルが心配そうに此方を見ている。
「大丈夫ですか?リタ」
「…平気よ、この位」
……自分でも情けない話だと思う。
朝起きたら頭が割れる様に痛くて、ジュディスに差し出された体温計で熱を計ったら見事に38度を超える熱が出ていた。
…というか、まず何でジュディスはそんなに準備が良いんだ。考えると頭痛が酷いから、後で本人に聞いてみよう。

「私、何か体に良い物作ってきますね」
エステルはそう言って、その場を駆け足で去って行った。カロルが「僕も!」と叫んでエステルを追い掛ける。…ああもう、煩い!頭痛いんだから静
かにしなさいよ、全く。
「リタっちが風邪って珍しいねー」
そこにレイヴンが顔を覗かせた。…ああ、また煩い奴が来た。
ムカつくから無視した。ジュディスがくすりと笑うのが聞こえる。
「えー、ちょっとリタっちぃー。
無視しないでよぉー」
へらへらと笑うレイヴンが近付いて来る。…本気でウザい。体調が良くなったらぶん殴ってやろう。心に強く誓った。
そんな時だった。

「はい、リタ!シャーペットです」
エステルがそう言って器を持ちながら此方に歩いて来た。…ねぇ?エステル??私の耳にはさっきからあんたの持ってる器の中からぶくぶくって
音が聞こえるんだけど…幻聴よね??
ユーリが苦笑しながら器の中を覗き込んだ。…ってちょっと!ユーリ!!あんた何処行くのよ!?待ちなさい!!
次いでジュディスが苦笑しながら器の中を覗き込む。…彼女は何も言わずに添えられたスプーンでシャーペット(らしい物体)を掬った。

「はい、リタ。
エステル特製シャーペットよ」

…ねぇ、ジュディス?
悪い冗談よね??

スプーンの上に乗ってるシャーペット(らしい物体)がスライムみたいな不気味な色してぶくぶく泡立ってるんだけど?!
ていうか…カロルとおっさんも何処行ったのよ!!…アイツ等も逃げたわね!?
体調が良くなったらみんなまとめてメテオスォームで殴ってやる。
そう思いながら、死ぬ気でエステルのシャーペットを口に入れた。


…よく分からない味がしたけど、
一つ言うなら。



これは人間が食べる料理じゃない。

勢いに任せてベッドに吐いた。何入ってるのよコレ?!吐き気が止まらないんだけど!!
下剤でも入ってるんじゃないか。咳き込みながら何回か嘔吐した。冗談抜きで苦しい。…これは有る意味殺戮平気だわ。最凶の。

「大丈夫?お水居るかしら?」
平然とした顔のジュディスが訪ねて来た。…あんたの所為でこうなってるんだけど。
エステルが心配そうに背中を撫でてくれた。本当は作った本人を殴りたいんだけど、本人は全く悪気が無く、寧ろこれでも一生懸命作ったんだと思
う。だから余計問い詰めれない。
怒りを喉に無理矢理抑えつけていると、レイヴンとカロルがやってきた。…あんた達今まで何処に居たのよ?!

「エステル、シャーペットは体冷えちゃうと思うから駄目だよ」
お。餓鬼んちょ。なかなか上手くフォローしてくれるじゃない。エステルは頷き、ちょっとだけ寂しそうな顔をしてシャーペットを持ちながらその場を離
れた。

「あら、美味しそう」
ジュディスが笑って呟いた。それと同時に口元にスプーンが近付く。さっきのシャーペットに比べると滅茶苦茶美味しそうなお粥が目の前に合った。
…エステルには悪いけどコレがあたしの本音。

「リタっち、食べれる?」
スプーンを持って居たのはレイヴンだった。…どうやら別の物を作ってくれたらしい。気が聞くじゃない。出来ればもう少し前に持って来て欲しかった
けど。
スプーンを持つ力も無いので、大人しくレイヴンに食べさせてもらった。…美味しい。

「これ…誰が作ったの?ユーリ?」
「ユーリなら今頃ラピードと外に居るよ」
…アイツ、本当に逃げてやがった!!
決めた。体調が良くなったら一番にユーリをぶん殴る。
……でも。
「ユーリじゃないなら…誰がコレを作った訳?」
問い掛けると、レイヴンがにたりと笑った。…すんごい嫌な予感がする。

「レイヴンが作ったんだよ!」
カロルが笑った。…やっぱりそうか!!
でも…悔しいけれども美味しい。

「美味しい?リタっち」
「…ま、あんたにしては上出来なんじゃない??」
「あら?とっても美味しそうに食べているわよ?リタ」
ジュディスが茶々を入れて来た。ああもう!いちいちおっさんのフォローしないでよ!!腹立つじゃない!!!
…おっさんに食べさせられてるのなんて忘れてた。顔を赤くしながら、無口でお粥を食べる。

「早く元気になれよ」

そう言って頭を撫でてくれるおっさんの手が…暖かかった。



*そうして私は、[貴方]という優しい夢を見る


旧サイト5000HITリクのALLかレイリタ。悩んだ挙句両方入れるという始末。アホすぎる。


08-08,20



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