脱衣場には偶々タオルを取りに来ただけだった。
今、風呂場にはおっさんが居る。アイツが風呂から上がったらあたしが次に入る予定何だけど、アイツはなかなか風呂から上がって来ない。
これは新手の嫌がらせかしら?
一回脱衣場と風呂場を遮断する扉を蹴ってやろうかと思った。ていうか今から蹴ってやろうか。
扉に近付くと、水の跳ねる音が響いた。一応風呂場で茹で蛸になってる訳ではないらしい。

「リタっちー?」
「…何よ」

声を掛けられるとは思ってなかったので、流石にビビった。ちょっとだけ声が上擦る。


「――背中流して欲しいなー」

ふざけた言葉が返って来た。
…ムカついたので拒否の言葉と一緒に風呂場への扉を殴る。おっさんがわざとらしく怖がる声を上げた。


「ねー良いじゃーん」
「うっさい!このエロおっさん!!」
「ホントに!何にもしないから。いやマジで!!」
「……」

…ちょっとだけ気まぐれに思った。
さっさと背中流して、さっさと風呂場から出てけば良いのよね。うん。きっと、ていうか絶対にそう。

「…ちょっとだけだからね」

別におっさんが可哀想だからとか、そういう情は無いんだから!!
心の中で自分に言い訳しながら、素足になって風呂場に入った。…意外だ。おっさんは律儀に風呂から上がって座ってた。

風呂場のサイドに置いてあるシャンプーとスポンジを手に取った。

「あれ、リタっち。気が変わったの?」
「煩いわね。あんまりウザいと流してないわよ?」
「や、悪かった!悪かったってリタっちー!!」

ウザいので一発殴ってから背中を流し始めた。
おっさんが何かを喋り掛けてくるけど全部無視。構ってたら面倒じゃない。



「ねぇ、リタっち」

「…何」

何時もと声のトーンがいきなり変わった。思わず返事を返してしまう。
水を噴射するシャワーの音が嫌に耳障りに聞こえた。

なんで。
なんでそんな顔してあたしを見るのよ。


「何時もごめんな」
「…何よいきなり」

濡れた手があたしの頭を撫でる。…ホント何なのよ、意味分かんない。
服が濡れてしまった事も、シャワーを落としてしまった事も気付かなかった。


なんで、こんなにも胸が痛いの。



*心に嘘を吐いてるなんて、ホントはちょっとだけ気づいてた


旧サイト11000HITリクのレイリタ。
旧サイトを作ったのがTOVが発売して1ヶ月以内だったからか、此処までメガヒットしました。目ん玉飛び出るかと思った。



筆記日不明



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