「逃げるぞ!!」

モンスターの群れの中で、誰かが叫んだ。――多分、ユーリだ。
偶然にもエンカウントリンクした敵が強すぎてパーティーは半壊状態。
勿論あたしとユーリもぼろぼろ。
ユーリの言葉に、あたしは踵を返して走り出していた。他のみんなもそうしている。



「リタっ」

何とか敵から逃げ切り、息切れしてるあたしに、同じ様に息切れしてるエステルが話し掛けて来た。
彼女はあたしの腕を掴んだまま離さない。…おっさんならまだしも、エステルの手を力強く拒絶する事も出来ないので、その場で止まり、エステル
の方を向く。
乱れた呼吸を整えながらエステルは両手を祈るように組んだ。その手から閃光の様な術式が輝き、光があたしの体の傷を癒やす。


「はい、これで大丈夫です」

エステルは満面の笑顔で微笑んだ。

「ちょ、ちょっと。
あたしなんかより自分を回復しなさいよ」

どうせあたし何て掠り傷――そう言いながら片手を振り上げようとして…激痛が走った。
痛みに顔をしかませながら腕を見る。…ちょっと腫れてるかもしれない。

それに気付いたエステルが、慌てて手を握ってきた。


「駄目ですよっ、無理に動かしたら。
一応治癒術は掛けましたけど…まだ安静にしてて下さい」

どうやら回復はしてくれていたらしい。…回復してこの痛みなら、回復してなかったらどれだけ痛んでただろうか。苦笑するしかなかった。



「わ、分かったから。ほら、自分を回復しなさいよ」
「私なら大丈夫です。それにリタの方が傷…酷いですよ」
「ホントに大丈夫だから」

そんなやり取りを何回か続ける。
やり取りが無限ループになりかけた時だった。


「さっきの戦闘。リタが一番狙われてました」

エステルが漸く話を逸らしだした。

「ま、詠唱者を狙う敵だったんでしょうね」

適当に返事を返すと、エステルが頬を膨らませて怒った。
それから、身を乗り出して訴えてくる。


「無理はしないで下さいね」


「…分かったわ」


これ以上反抗すれば何を言われるか分からないので頷いた。
それから、遠くで休憩しているユーリに話し掛け、腕の事を話して二軍に入れてもらう。…どうせこの腕じゃ当分戦闘は無理だ。



「もし何か合ったら、私がリタを守ります」
「…馬鹿っぽい」

エステルの言葉に、照れ隠しでそう言うしか出来なかった。



*私が貴方を守ります


旧サイト23000HITリクのエスリタ。
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08-09,20



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