川沿いの近く。
予め街で買っておいたテントは広げられ、テントの中で仲間達はすやすやと安息に眠っている。

「リタっちはまだ寝ないの?」

本時の見張り当番であるレイヴンがちょっかいを掛けてきた。それを無視して本を捲る。
男は苦笑して、あたしの頭を撫でながら立ち上がった。何処かに向かって歩き出す足に、思わず目がいってしまう。

「何処に行くのよ?」

問い掛けると、

「いやー綺麗な川だねぇと思って」

呑気な返事が返って来た。
レイヴンは上着を脱ぎ捨ててほおり投げると、餓鬼みたいに川に飛び込んでった。…あいつ、本当に馬鹿?
勢い良く水に飛び込んだ男が川水の底から顔を上げる。
当然の如く服はびしょ濡れ。…あれは絶対に風邪を引くなと推測した。

だが月明かりに反射する水は、一瞬だけど確かに綺麗で。
キラキラ、夜空に浮かぶダイヤモンドの様で。
少しだけ手を伸ばした自分が、馬鹿みたいだと思ったけれど。それでも月の光を浴びた水は綺麗だった。
同時に、背景に溶け込む様にレイヴンが笑う。

「リタっちも来る?気持ちーよ」

此方に伸ばされた手に、少しだけ動揺した。…絶対服濡れるし、ていうかおっさんの誘いに乗る気何て無いし!!

でも。…やっぱり少しだけ興味や好奇心は沸いてきて。


「おいで」

そう言って手招きするレイヴンに折れて、本を閉じてその場を立ち上がった。
川岸に近付き、腕を伸ばしたままのレイヴンの手の平に、そっと自分の手を添える。
すると急に両手首をひっつかまれて、川まで引き込まれた。
悲鳴を上げる間も無く、あたしの体は川へ転落する。転落したあたしの体を、レイヴンが優しく――ちょっとだけ強く抱き締めて来た。


「ほら、ね」

月明かりに反射されながらレイヴンが笑う。影を消す月明かりの光が、眩しい。

「………」

抱き締められてる事が恥ずかしくて、黙り込んだままで居る事しか出来なかった。
コイツはずるい。
あたしが何処までが反抗出来て、何処からが反抗出来ないか、把握してやってるんだ。

そんなあたしの気を察してか、
レイヴンが唇を落として来た。







(誰にも邪魔されない、水の空間で)
(月だけがあたし達を視ている)



*月明かりに重なるSilhouette


旧サイト25000HITリクのレイリタ。
砂糖何杯入ってるんだよこれ。甘すぎるよ。甘党の私もびっくりだよ←←


08-09,23



Back