「青年って最近、リタっちと仲良いよね」
そう言ってふらふらと此方に近付いて来たのはレイヴンだった。中年男の方を振り替えると、男の片頬が赤くなっている。恐らくリタに殴られたのだ
ろうな。何をしたのかは知らないけれど。

「俺、リタと仲良くなる事何て何一つしてないぜ」

というのは、本当は嘘。
気付いたら自分でも驚く位にリタに惹かれていた。そして次に、誰にも渡したくないという独占感が湧き出し、この頃は彼女の気を引いて、彼女を
喜ばせている。
昨日は確か、彼女の好きなクレープを作ってやった気がする。
照れ隠しに俯きながら、「有難う」と言って皿を受け取る彼女は本当に可愛らしかった。また暇が合ったら作ってやろう。

「…本当に何にも無かったの?」
疑い深くレイヴンが問い掛けてくる。…こういう時だけ冴えてるんだよな、おっさんって。
「ああ、何もない」
敢えて嘘を貫いた。此処で本当の事をバラすとこの後が色々面倒だ。
レイヴンは小さく溜め息を吐いて立ち上がった。立ち上がりながら男がぽつりと言葉を漏らす。


「おっさん。リタっちの事好きなのよ」
「……あっそ」

「だから…ね。
ぶっちゃけ青年と仲良いの見ると…ヤキモチみたいなの湧くんだよね」

レイヴンはそう言って苦笑した。
…まぁ、こいつがリタの事を好きだって事は前から薄々気付いて居たが……。
何だか胸に落ちない。心が渦を巻いている。

「青年はどうなのよ?」
「…何がだ?」

聞かれているのはリタの事だ。
分かって居たが、敢えてはぐらかした。

「リタっちの事」

聞けばそう返して来るのは予想していた。だから何も思わない。…唯、返す言葉に戸惑った。

俺は、リタの事をどう思って居るのだろうか。




「…ま、答えたくないなら良いけどぉ?」

沈黙を無回答と取ったらしいレイヴンが、口ごもりしながら言った。
中年男はまたふらふらとこの場を去っていく。…遠くからリタの怒声とレイヴンのちゃらけた声が聞こえる所からすると、どうやらおっさんはリタにちょ
っかいを掛けに行った様だ。
リタは怒声を上げながら時々照れた顔になったり、ちょっとだけ微笑んだりしている。…くるくる表情の変わるリタに、目線が自然と傾いてしまう。

立ち上がり、レイヴンとじゃれているリタの後ろに回った。
気配に気付いた彼女が振り返る――前に、後ろから抱き付いた。
「なっ…!?」
悲鳴を上げるリタと、呆然とするレイヴンを見合わせながら、口元をやんわりと釣り上げる。


「おっさん。さっきの問いの答えだけど」

リタが首を傾げる中で、レイヴンは未だに呆然となっていた。そんな彼にきっぱりと告げる。


「俺もやっぱり、好きみたいだわ」


怒ったり笑ったり、喜怒哀楽の激しい彼女の事が。



「…そ。
じゃあ青年とおっさんはライバルだわ」

そう言って笑うレイヴンに、自分も釣られて笑った。

「ちょっと。どういう意味よ」
「何でもねえよ」

まさか自分の事を言われてるとは思いもしないのだろうな。そう思うと余計に愛しくなった――。




*譲れない、譲りたくない。一番愛している人だから


旧サイト26000HITリクのリタ受。
リクエストがリタ受だったのでレイヴンとユーリに取り合わせてみた←病気



08-09,27



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