理由なんて覚えていない。
だが現在。レイヴンとリタは激しい言い争いをしていた。…正確に言えば、リタが一方的に喧嘩を仕掛けてきているのだが。


「あんた何て大嫌い!!」
「ちょ、リタっち。落ち着いて。ね?」
「あんた何か……死ね!!」

彼女はそう叫んだ後に、少しだけはっとなった顔を見せた。
それから俯いてその場を走り去って行く。…俺が傷付いたとでも思ったのだろうか。
まぁ確かに今の言葉には傷付いたが、彼女があんな顔をしなくてはいけない程傷付いた訳ではない。

走り去って行った彼女を追い掛け様として――足が止まった。

喧嘩の理由なんてもう覚えてないが、悪いのは自分の気がする。
…そんな自分が彼女を追い掛けて良いのだろうか。いや、絶対にダメだ。あの子が余計に傷付くだけ。
ぼんやりと映る遠くの視界に、俯いて涙を零すリタと、慰めようとしているユーリの姿が見えた。

…やっぱり、今は行かない方が良いのだろうな。
胸が締め付けられる様な思いを引き摺って、リタ達から離れる為に歩き出した。



*これが嫉妬と呼ぶなら、俺は

(きっと君に、叶わない恋心を抱いてしまった)



リクエスト小説第二段。この短さはまさに病気。



08-08,22



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