横で氷枕を乗せたリタが、息も絶え絶えに寝転がっている。 ――事の始まりは彼女の体調不良だ。 ユーリを初めとする全員が休めと言ったのだが、彼女が大人しく言う事を聞くはずもなく。 限界ギリギリまで魔物と闘った彼女は、やがて病気を悪化させて倒れてしまった。 現在は宿屋の一室で彼女の面倒を自分が看ている。ユーリとエステルは良い医者を探しに行き、ジュディスは彼女の為に簡単な流動食を作りに 行った。カロルはその手伝い。 しんとした部屋には自分と彼女しか居ない。そんな中で時折リタが苦しそうに咳込んだりした。 「無理し過ぎでしょ、リタっち」 頭を優しく撫でてやる。最早反抗する気力さえも残っていないのか、彼女は何も言わなかった。 「リタっちー。大丈夫ー?」 「…ぅる、さぃ…」 掠れた声が其れだけを紡いだ。それからまた苦しそうに咳き込むのが痛々しい。 あまり大きな声で喋ると頭に響くのだろうな。少し声の大きさを控える事にした。 「あつい…」 氷枕を乗せたリタがぽつりと呟く。 「脱ぐ?」 手を伸ばすとあっさり拒否された。 彼女が此方を睨んで来る。…声は掠れていても、そんな気力は残っているのか。苦笑する以外に無かった。 「自分で脱ぐから…触んないで」 そう言って彼女は体を起こしたが、直ぐに倒れてしまった。背中を慌てて支える。華奢な体が何時もよりずっと小さかった。 「無理すんなって言ってんでしょ」 汗で少しだけ湿っている服に手を掛けた。上服を少しだけ開けると、リタがちょっとだけ楽そうな顔をする。 手探りでタオルを取り、首周りを拭いてやった。支えられている彼女は大人しい。 軽く首周りを拭いてから、ベッドに優しく寝かせてやる。目を細めた彼女がじっと此方を見てきた。 「弱ってるリタっちも可愛いね」 「…死ね」 ふざけてみると、顔を赤くしたリタが呟いた。先程よりはずっと楽そうだ。 頬に手を当てて、無理矢理キスをした。 元から苦しそうに呼吸をしていたので長いキスは出来ないだろう。諦めて直ぐに唇を離す。リタが呆然っした顔をしていた。 「な、にを…」 「大丈夫」 何が大丈夫なのか自分でも分からないが、そう言って優しく笑った。 半分脱がせた服に再び手を掛ける。 弱っている所為か、リタは全く抵抗して来なかった。息遣いだけが部屋を支配する音となっている。 「リタっち」 愛してるよと、耳元で優しく囁いた。 *君がこんなにも愛おしい 08-09,03 Back |