砂糖の持つ独特の甘い香り。
生クリームを泡立てる音。
本日の料理当番であるリタが作っている料理に、レイヴンは苦笑を隠せないでいた。…多分、作っているのはクレープだと思う。
確かに先程の戦闘でTPを大量に消費したが…。甘い物が苦手なレイヴンにとっては苦痛でしかない。

「ねーぇリタっちー。
俺様甘い物苦手ー」
クレープの生地をかき混ぜているリタに声を掛けてみた。
すると彼女は目一杯に此方を睨んで来る。…邪魔するなと言う事だろう。
だが甘い物だけは本当に無理だ。何が何でも、絶対に無理!!

「俺の分は抜いといて、リタっち」

その場を離れようと踵を返そうとすると――リタがクレープの生地が入ったボールを置いて、代わりに既に完成しているクレープを突き出して来た。


「食べて」
「や。だから俺様、甘いの苦手…」
「あーもうっ!!
食べろって言ってんでしょ!?」

リタが皿に乗ったクレープを掴んで口元まで持ってきた。…あの、これ新手のおっさんいじめ?
しかしこのまま食べずに居ても彼女から魔術が飛んでくるのは明白だ。
仕方なく口元に近付けられたクレープを一口かじってみた。




「…ん」



……驚いた。
口の中で消化されるクレープは、想像していた程甘くはなかった。フルーツの酸味の方が強く感じる。うん、これなら食べれる。


「その位なら食べれるでしょ」
リタが掴んで居たクレープを皿に下ろしながら言った。
「…もしかして、わざわざ甘さ控えめなの作ってくれたの?」
「か…勘違いしないでよ!!
あんたがTP回復してくれないと、グミが勿体無いからわざわざ作ってやったの!!!」

真っ赤になった顔を隠す様に、そっぽを向きながらリタが叫んだ。
か細い腕を掴み、無理矢理此方を向かせ、肩身を抱き寄せる。――腕の中のリタは何が起こったのか分からないという様に呆然としていた。


そんな姿まで愛しくて。
抱き締める力が自然と強くなる。彼女のぬくもりは暖かい。


「ありがと、リタっち」
「……」


リタは真っ赤な顔のまま、何も言わなかった。



*小さな優しさにさえ愛を感じる


リクエストがレイリタ癒し系だったんだけどこれの何処が癒し系なのかさっぱりわからん←死んでくれ


08-09,16


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