※時期:パーティーにリチャードとヒューバートが居ないところだったら何処でも←アバウトすぎる
※マリク目線



パスカルが足を怪我したのは数日前のことだ。

シェリアが回復術を掛けたものの暫くは安静にするべきだろうと術を使った本人が判断した為、当分の間彼女は二軍行きになった。
その所為も合ってか、最近のパスカルは不機嫌だ。
銃と術の戦法何だから動かずとも戦闘は出来るだの、もう足痛くないのに何で二軍なんだだの…。
元から喋るのが好きな彼女からは尽きることなく言葉が溢れてくる。
気持ちは分かるが、此処でもし戦闘に出して足が悪化したのならシェリアの気持ちが無駄になってしまう。大事を取って二軍行きにしたのは正確
な判断だ。


「きょーかーん!!あたしも戦闘でたいー!!」
何故アスベルではなく俺に言うのだろう。
苦笑しつつ会話をかわし、道を歩きだせば、パスカルは膨れ面のまま後を着いてきた。

「足、もう大丈夫なのか?」
話を逸らそうと足の怪我について問うと、パスカルの目が一瞬にして輝く。
「全然だいじょーぶ!!完全完治済み!だから、」
「戦闘は出せないぞ」
「…教官のケチ」
そんな事だろうと思ったが此処まで図星とは。
パスカルのやや単細胞な所にくすりと笑うと、パスカルがまた頬を膨らませながら着いてきた。



* * *



「…?」
宿屋のベッドで安眠した翌日。ベッドには自分のものではない髪の毛が落ちていた。
色と長さからして、アスベルの物でもシェリアの物でも、ソフィの物でもない。
…この銀と赤の混ざった髪は、間違いなくパスカルの物だった。
だが昨夜は各自一部屋を借りて寝たのだ。パスカルはこの部屋には入っていない。
…じゃあこの髪の毛は一体??


とにかく体を起こし、身嗜みを整えた後に部屋を出た。
廊下には丁度パスカル一人が立っている。聞いてみるなら今だろう。

「パスカル」
呼んで見ると暇そうにしていた彼女は直ぐにこちらを向いた。
「あ、教官。おはよー」
「おはよう。…昨日、俺の寝てた部屋に入らなかったか?」
問い掛けるとパスカルが不思議そうに小首を傾げる。
「なんで?」
「実は今日……」
お前の髪の毛が落ちていたと言いかけたところで、部屋からアスベルが出て来た。
直ぐ後にソフィとシェリアも部屋から出て来る。

「…この話は、また後でな」
「?…りょーかーい」
アスベル達の居る前でこの事を話すことには少しだけ抵抗を感じた。
そんな俺に再び小首を傾げたパスカルが小さく頷いた。





不思議な現象はそれからも数日続いた。
寝る前に念入りに確認した筈のベッドに、翌日になるとパスカルの髪の毛が落ちているのだ。
これはやはりパスカルが部屋に入ってきているのだろうが、問い掛けても彼女は上手く話をかわしてしまう。

…ならば証拠を掴んで認めさせれば良いのだ。

今夜も同じ様に部屋の電気を消し、ベッドに潜り込んだ。
但し、眠らない様に時々目薬をさしたりして何とか意識を保つ。
だが何時までも持つ訳ではなく、午前2時になったところで流石に諦めようと思った。――瞬間。


小さく、扉をノックする音が聞こえた。
咄嗟に起こしていた体を寝かし、目を閉じ眠っているふりをする。

「…教官、起きてる?」

――案の定。扉の前から聞こえたのはパスカルの声だった。
返事をせずにじっとしていると、扉が開く音がする。…パスカルが部屋に入って着たのだろう。
足音は俺が眠るベッドの前で止まった。…近くに感じる人の気配はパスカルで間違いない。
彼女は俺が目をつむっている事を確認すると、意外にもベッドに潜り込んで来た。
…髪の毛が落ちていたのはこの所為か。
謎が解けたところで、ベッドに潜り込んだ彼女の腰に手を回し、目を開けた。
「ひゃあっ!!」
「よう、パスカル。これは何の真似だ?」
意地悪気に微笑めば、口をぱくぱくとさせたパスカルが咄嗟に笑顔を浮かべる。
「え、えーっと。教官に悪戯でもしよっかなーって思って…うん」
「ずっと前から俺のベッドに潜り込んでいるよな?」
「そ、そんなこと無いって!!」
彼女は首を横に激しく振って否定するが、ベッドに落ちていた髪の毛の事を話すと否定しなくなった。…出来なくなったの間違いだろうか。
「パスカル」
「…だって、最近教官が構ってくれないんだもん」
…構ってくれない、って。構った覚えも無い為思わず苦笑してしまった。
「話し掛けているだろう」
「戦闘二軍になってからあんまり会話してない」
…確かにそれは有るかもしれない。
彼女が足を怪我するまで、パスカルはパーティーの後援型として度々戦いに参加していた。俺もその内の一人で、戦闘をしていれば自然と会話も
かわされる。アイテムを使用する事も多々あったし、そう考えれてみれば確かに、パスカルとは彼女が足を怪我してから余り話していない気もす
る。

パスカルが訴える様な目でこちらを見た。
…吸い込まれそうな瞳だ。思わず彼女をベッドに押し付け、馬乗りの様な体制になる。
「教、」
「お前の言い分は分かった」
腕を押さえ付け、暴れる彼女を無理矢理静める。
「唯、成人男性のベッドに潜り込む行為は感心しないな」
そうしてこちらから唇を重ねれば、パスカルは少しだけ痙攣した。
「きょー…かん…」
「名前を呼べ、パスカル」
腕を押さえたまま二度目のキスをすれば、もうパスカルから抵抗の二文字は消えていた。
「…マリ、ク」
「パスカル」
小さく呟いた彼女の頭を愛おしみながら撫でる。
再びベッドに体を倒し、パスカルの体を抱きしめると、パスカルの手が微かに背中に触れた。



*Myプリンセスのご機嫌事情
(パスカル、俺はお前を)



10-03,24




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