※教官ご乱心
※全てが病んでるので注意



君がよく解らないんだ。
20年前に見失ってしまった彼女とは別の意味で、今は君が解らない。

少し前まではよく俺に懐き行動を共にしていたと云うのに、ソレを横から男が持ち去って行った。今では彼女は彼と行動する事が多くなり、俺は孤
独に置き去りのままだ。君は何時迎えに来るのだろうと待っていたが、君が余りにも迎えにこないから、こちらから迎えに来てしまった。

彼女は苦しそうにもがき、必死に俺の腕や指を叩いた。
無駄なのに。お前の力で俺に勝てる筈など無いのに。
ああ、最初からこうすれば良かったのかもしれない。



手口は簡単だった。
「ちょっと良いか?」
楽しそうに喋る彼女と彼の内、彼女の方を連れ出した。
昔は俺に懐いていただけの事は有る。彼女は何も言わず無邪気に俺に着いてきた。彼もまた特に何も言わなかった。
彼女さえ連れ出せればこちらの物で、後は人の来ない氷海にでも連れ込むだけだ。
冷水に顔をつけ目を覚ませ、泣き叫ぶ彼女の口と首を閉めた。
「きょ…か、ん……」
喉から細い息の漏れる音。
口だけを動かし声にならない止めてを繰り返す君は、今まさに俺だけを見ている。
快楽にも似た気持ちで首を絞める力を強めた。俺に溺れて、おっ死んでしまえ。それが君と俺のシアワセだ。

「く……し、ぃ…」
綺麗な涙を零した彼女の体に、既に抵抗の力は無かった。
ああ、やっと大人しくなった。
ゆっくりと力を緩めれば、彼女は寝そべったまま一生分じゃないかと云う程咳込み、また涙した。
「ど…して……きょー…かん……」
細い目つきで涙を流す彼女は、まさにフェンデルのこの景色に同調する美しさだった。
色素の薄い髪に青ざめた顔、透明な雫…。全て完璧だった。


「パスカル」
手を伸ばせば、また首を絞められるとでも思ったのか彼女は身を後ろに退いた。
可愛らしいなと思ったのも一瞬のこと。自身の肩を抱きしめる彼女は一言だけ呟いた。


「ヒューバート……」

――それが一番聞きたくなかった言葉なのに。



止まらなかった。止めれなかった。
気付けば彼女の上に馬乗りになり、何度も暴行し、髪を引っ張り、最後に冷たい口づけをして氷の割れ目にたたき落とした。

「げほっ…!!」
寒さと冷たさに震える彼女は、必死に氷の這っている場所にあがろうとするが、寒さによる震えの所為か上手くよじ登れない。


「きょ……か…」

「愛してる、パスカル」


君が最期に呼んだ名前が俺で良かった。
彼女の助けの声を無視し、その頭を足で無理矢理水の中へ沈めた。










抵抗していた彼女はやがてぴくりとも動かなくなった。



*Love For Ever
(これでお前は、永遠に俺のモノだ)



10-03,24




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