※時期→ストラタに着いて直ぐ〜ヒューバートのパーティー参戦まで



「あーつーいー…」
例によって例の如く、歩く度に愚痴を零すパスカルにはパーティーの誰もが苦笑だった。
確かにストラタはウィンドルに比べると随分熱い。自分達は良い環境で育ったのだと自覚する程だ。 

そんな熱さの中にも魔物は存在する訳で。
目の前に現れた魔物に、全員が全員溜息を吐きながら武器を手にとった。
「えー…あたしもう疲れたー……」
こんな時までパスカルは我が儘だ。流石に戦闘は出ろとアスベルが促そうとすれば、不意に彼女の後ろに揺れる影が見える。
――横からも敵が来ている!
 
「パスカル!!」
アスベルが危ないの「あ」まで言いかけた瞬間、目の前を投剣が擦り抜けて行った。
素早く投げられたそれはパスカルの後ろで綺麗な孤を描き、同時に魔物が後ろへとひっくり返る。
魔物を薙ぎ倒した剣は持ち主の場所へと再び孤を描き戻っていった。
 
「危ないだろう、パスカル」
剣を投げたのは一目瞭然だった。教官だ。
向こうではソフィとシェリアが力を合わせてもう1体の魔物を薙ぎ倒している――魔物はどうにか退治出来たみたいだ。
マリクはアスベルの横を擦り抜け、呆然と座りパスカルに手を差し出した。

「立てるか?」
「へ?あ、うん。平気へいきー」
パスカルは慌ててその場を立ち上がり、砂の付いた服を軽く払う。
「そうか、なら良かった」
マリクは一瞬だけ柔らかく微笑んだ。
だが直ぐに表情を固くし、パスカルに一歩近付いたと思えば、
 
――ぱちんと、叩く音が聞こえた。
 
「…きょーかん?」
「周りを見ることを大切にしろ。…もう少しで大怪我だったんだぞ」
マリクがパスカルを叩いたのだ。理解するのにアスベルも遠くにいるシェリア達も数秒掛かった。
「…うん」
小さく頷いたパスカルは、そのままそっぽを向いて歩きだしてしまう。
…恐らくパスカルを心配して説教したのだろうが、逆効果だったみたいだ。
苦笑するアスベルの横を今度はソフィが通り過ぎた。 

「教官、パスカルと喧嘩したの?」
「喧嘩…か。近いかもしれないな」
「仲直りしないの?」
「…そう、だな」
先を歩きだしたパスカルを、マリクが小走りに追いかける。 

「パスカル」
マリクが呼ぶと、彼女は普段と変わらないなだらかな表情でふり返った。…怒ってはいないみたいだ。
パスカルも今のは自分を思っての説教だと分かっているのだろう。 
「その…すまなかったな」
「なにがー?」
パスカルのあれは天然なのかわざとなのか。
アスベルは傍に寄ってきたシェリアと目が合い、苦笑した。
「…頬を、叩いたことだ」
「…ああ!」
思い出した様に閃いたパスカルが何も変わらぬ笑みを浮かべる。 
「だって教官、あたしのこと考えてしてくれたんでしょ?全然オッケー!」
そう言ってパスカルは再び前を歩きだしてしまった。取り残されたマリクが少しだけ後ろを振り返る。
小走りにやってきたソフィが、再び彼に話し掛けた。 

「仲直りした?」
「ああ、したよ」

「友情の誓い…しないの??」 

シェリアとアスベルが喧嘩した時と同じ段取りに、マリクは再び苦笑を浮かべた。



*空回りの午後×時



10-03,27


パスカルのこと本気で心配して怒ったりしたらちょっと萌えませんか←やかましいわwwww




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