※死ネタ ※ED後想像 「今日は危険地区の工事なんだ」 朝一で出掛けようとするマリクは同居しているパスカルに微笑んだ。 そんな彼にパスカルは無言で通信機を差し出す。 以前、ポアソンとパスカルがやり取りをしていたあの機材だ。 「じゃあ何か合ったら連絡してね!!」 「ああ、分かった」 彼女の頭に軽く手を乗せ指に髪を絡める男は、そうして家を出て行った。 「あ、」 彼が家を出て行って数時間。 飛んできた通信機にパスカルは手を伸ばす。 (――あれ?) だがそれはパスカルが朝マリクに貸した通信機では無く、姉フーリエが何時も持ち歩いてる型の通信機だった。 危険地区は私も立ち会う予定なの。 何時だったかフーリエが言った言葉が、パスカルの頭に再生される。 悪い予感がした。 通信機の内容を、震えた手で読み取る。 「…うそ」 姉からの電報は予想通り、悪い知らせだった。 ―貴方の同居人が死んだ― ―今直ぐザヴェートまで来なさい― どうやってザヴェートまで行ったのか分からない。 ザヴェートの霊安室には、朝微笑んでいた彼が安らかに永眠していた。 「事故だったのよ」 隣に居たというフーリエは語る。泣き止まない妹を労りながら、彼の死を悲しみながら。 「…大型パイプが落ちてきてね、彼は私を庇ったの」 誰にでも優しいマリクの事だ。 まして愛しい女の姉であるフーリエを守ろうとするのは、彼の本能とも呼べるだろう。 そうしてマリクは還らぬ人となった。 「…ごめん、パスカル。 私がもっと注意して周りを見てれば良かった」 「きょーかん…」 どうしてお姉ちゃんの上にパイプが落ちてきたの。 どうして庇ったのが教官なの。 涙を零すパスカルに、フーリエの声は届いていなかった。 *鳴らないコール 10-03,31 Back |