※ED後設定 ※病んでるっつーかとことんダーク。 「教官、あのね」 彼女は口元を綻ばせ、笑顔を浮かべた。 大紅蓮石の設置されているザヴェート氷海の一角に設けられた救護室の一角。 簡易ベッドに座る彼女の体を、マリクは横から抱き寄せる。 「あたし、後悔してないよ」 普段と変わらぬトーンだった。パスカルはマリクの腕の中で、甘える様に喉を鳴らす。 その両手には少し赤く染まった包帯が巻かれていた。 彼女の体中に巻かれたそれは、絶ち切れない運命の赤い糸を現す様だ。 「…ごめんな、パスカル……」 耳元に囁き、頬を濡らす。 全て俺の所為なのだ。彼女がこうなってしまったのは。 ――その日、作業は難航を窮めていた。 極度の寒さの中で行われる工事は、パスカルやフーリエという優秀な技術者が居ても事態を突破できない。 「別の区域を見てくるわ」 事故数分前、フーリエは指揮官であるマリクと、横で必死に設計図の簡略化を考えるパスカルに言った。 彼女はそのまま別の区域に向かい、残されたマリクとパスカルは大紅蓮石の前でそれぞれの成すべき事をする。 「ねえ、教官。これでどう?」 「ん?」 パスカルの声に反応したマリクが、後ろを向いて彼女の簡略化された設計図を見た。 設計図を見る限り、作業が大分楽に進めれる改造されている様だ。 「良いんじゃないか」 パスカルから設計図を受け取り、それを各地域の作業員に店に行こうとした。 だがそれをパスカルはマリクから奪い取り、舌を出してやんちゃに笑う。 「これはあたしが皆に見せに行ってくる!」 マリクの返事を聞かないまま、彼女は走り出してしまった。 「おいおい、それは俺の仕事だって」 彼女の後を追いかける。踵を返したパスカルが、突然此方に向かって走り出してきた。 「きょーかん!!」 「――パスカル?」 落下音と、体に走る衝撃。 ――後からフーリエに話を聞いた話だと、パイプ配置場所の指示が上手く通っておらず、誤った場所にパイプを落としてしまったらしい。 俺より先に、パスカルがそれに気付いていた。 誤った場所に転落するパイプの雨から、彼女は俺を守ったのだ。 この事故でその場に居た沢山の人間が死傷の傷を負ったというのに、落下したパイプのほぼ中心に居た俺が一番軽い怪我で済んでしまった。 救護施設に早急に運ばれたパスカルは、偶々救護施設に来ていたシェリアの治療を真っ先に受けた。 シェリア曰く、手足の傷は直ぐに回復出来たという。唯、 「打ち所が悪い」らしい。 唇を噛み締めた。 ――そんなシェリアは現在、事故に巻き込まれた他の人間の手当てにも廻っている。 「…設計図。続きはお姉ちゃんが作ってくれるよ」 「そういう問題じゃない」 「えっと、じゃあ…お風呂とか?あたしそんなにお風呂に入らないし…」 「そういう問題じゃないと言っているだろう!」 どうしてこの子は、無理に笑うんだ。 俺が怒ったことに対し少しだけ肩を震わせた彼女は、小さな声でごめんと呟いた。 「今教官がどんな顔して怒ってるのか、あたしには分からない…」 *いっそ、責めてくれたほうが楽だった (打ち所が悪かったのね…) (両目とも、失明してるかもしれない) 10-04,01 Back |