※マリク目線



「パスカル?」
良く行くバーで顔見知りの女性に誘われ一緒に酒を飲んで帰宅すれば、パスカルは部屋の隅で膝を抱えていた。
具合が悪いのだろうか。近寄ると彼女は顔を上げた。
「…きょーかん…」
普段とは真逆の、消えそうな声。
「どうした?」
掛けてやる言葉が他に見当たらなかった。
問い掛ければ、再び俯いてしまった彼女が頬に雫を伝わせる。

「あたし、教官の傍に居て良いのかな」
「…なんだ、いきなり」
彼女がそう思う理由が分からない。
第一、パスカルが俺の傍に居るというより俺がパスカルの傍に好んで居るのだ。ロベリア以来だった。誰かにこの感情を与えられたのは。

頭を撫でてやろうと手を置こうとすれば、彼女は手で俺の腕を弾いた。

「だってあたし、シェリアとかソフィみたいに可愛くないもん!!
2人や…教官の周りに居る人みたいに、女の子らしく出来ないし……」
「…パスカル」
「あたしより教官の隣が似合う人は…いっぱい居るし、さ……」

涙声の叫びの後に、再び掠れた声。
恐らくパスカルは俺が今日別の女性と飲みに行ったのを知っているのだろう。

最初に思ったのは、自分でも最低だなと思う感情だった。
それから彼女を無理矢理腕の中に納め、きつく抱きしめる。
抵抗されてもお構い無しに彼女を拘束し続けた。

「良いか、パスカル」
耳元に優しく囁く。小さな彼女の抵抗が止まる。
「俺が好きな女は、お前だけだ」
「…今日飲みに行ってた人は…?」
やっぱり見られていた。恐らく偶然バーの前を通ったのだろう。
「向こうが誘って来たから飲んだ」
納得してくれただろうか。パスカルの顔を見れば、彼女は俺の顔を見上げていた。

「…教官を独り占めしたいって思うのはダメ?」
ああやっぱり。
嫉妬するパスカルが可愛らしくて、その唇に唇を重ねる。


「駄目じゃない」


愛しいと言う感情を取り戻してくれた、君に出逢えて良かった。



*嫉妬する彼女



10-04,02




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