隣に居るパスカルから甘い匂いがした。 気になってパスカルを見れば、彼女と視線がぶつかる。 「ひょうふぁんもふぁふぇる?」 彼女は目の前にドロップと書かれた缶を突き出してきた。 何を言ってきたのかさっぱり分からないが、差し出された細長い缶からして、俺も食べるかと聞いてくれているのだろう。 「…味は?」 「んー…いひごと、ももと、ぶほう…めほんほあるよ?」 …何と無くは分かった。 「いちごで良い」 注文を受けたパスカルがドロップの缶を開け、中から苺味を探し始めた。 だが一向に見つからないらしく、彼女はしきりに缶の中を掻き回す。 「…ごふぇん、これがさいふぉ」 彼女はそう言って自分の口を開けた。 彼女の舌の上には、半分溶けた赤いドロップが乗っている。 「そうか」 小さく呟き、舌を出したままの彼女に不意打ちで唇を重ねた。 舌を使って彼女の唇の中から苺味のドロップを奪い取り、唇を離す。 「…苺味だな」 「…きょーかんのばぁか!!」 「ああ、馬鹿だな」 キスをした事についてそう言われているのか、それとも最後の苺味のドロップを奪った事についてそう言われているのか分からないが、顔を真っ赤 にしたパスカルが愛おしいことだけは確かだった。 *ドロップ*ラブ 10-04,06 Back |