※マリク目線



先程からパスカルはこちらを盗み見しながら唇を釣り上げ笑って来る。
「んふふ」
よく分からない笑い声を零しながら、彼女は又俺を見た。

「そんなに可笑しかったか?」
「別にぃ〜?」
数分前の出来事だ。
待ち合わせ場所に少し遅れて辿り着くと、パスカルが知らない男にナンパされていた。
彼女を見た目だけを見ればスタイルも悪く無いし小柄で可愛いから、誘いたくなる男の気も分かる。
だが男がパスカルの肩に触れたのは許せなかった。
男の体を突き飛ばし、パスカルの体を無理矢理抱き寄せた。
「俺の女に何か用か?」
見た目と背中に背負った投剣に怯えた男は、首を勢い良く横に振って走り去っていった。

そしてそれ以来、パスカルはずっとこんな調子である。

「俺の女!だって!」
喉を鳴らして笑うパスカルに、流石にあれは言い過ぎかと苦笑する。
だが言われてばかりではつまらない。足を止め、人目も気にせず彼女を抱き締めた。
「お前は俺の女だろう?違うか?」
「…違わない、よ」
パスカルは遠慮がちに呟き、こちらを真っ直ぐに見上げて来た。
頬を桃色に染めたパスカルはどの女性より可愛らしい。
見上げて来た彼女の唇に唇を落とすと、触れるだけのキスだったがパスカルの顔が途端に真っ赤になった。


彼女の体を解放し、何事も無かったかのように先を歩き出せば、頬を赤くしたパスカルが追いかけて来る。
小走りに駆け寄ってきたパスカルは恥ずかしそうに叫んだ。



「きょーかんのセクハラー!!」



*休日デート
(セクハラ?何のことだ?)

(だっ、だからその……うー…)



10-04,11




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