パスカルと恋人だと言う事は死んでも明かしては為らない事実だとマリクは肝に命じている。
特にシェリアに悟られたら最後だ。パーティー全員に広がることはまず間違い無いだろう。
そんな自念からマリクはよくパスカルと距離を置く。
勿論それはアスベル達の前だけで、2人きりになった場合や皆が寝静まった後は完全に2人だけの世界だ。
そんな関係が続く中、一方のパスカルも皆に公認させたくないと言うマリクの思いは分かっているらしく今の所ソフィにもヒューバートにも喋ってはい
ない。

唯、最近は2人きりになる時間が滅多に無い。
仕方ないことだとは分かっているがお互いに深刻な相手不足だ。一度アスベルがパスカルの背中を叩いた時、パスカルが「なに教官?」と言った
時、マリクは心臓が止まるかと言う思いを体験した(因みにこれは周りに鈍感なアスベルしか居なかった為何とかバレずに済んだ)。

「ねえ、教官」
いい加減公認させても良いんじゃない?と、マリクはそう言われるのかと覚悟していたが意外にもパスカルは別の…想定外だった言葉を言い出し
た。
「背中に文字書くから何て書いたか当ててねっ!」
「…新しい遊びか?」
「うんっ!」
パスカルは無邪気に笑い、人差し指で背中に文字を書き出した。
確かにこれなら皆が居る前でも2人だけの会話が出来るし、他者から見ればじゃれている様にも見える。よく考えたものだ。
「だ、」
背中に書かれた一文字目は「だ」だった。
振り返ればパスカルが人差し指を自らの唇に当てている。…声を出すなという事らしい。
彼女はそうして文字の続きをなぞった。

い、す…。

…此処まで来てやっと分かった。恐らく最後の文字は「き」だ。
直ぐにでも抱きしめたい衝動を必死に堪え、今一度パスカルの方を振り返る。

「答えはあたしの背中に書いて!」
彼女はそう言ってやや頬を赤く染めたままマリクの目の前に座った。
微笑んだマリクがパスカルの背中に人差し指で文字を描く。


お、れ、は、あ、い、し、て、る。


書き終えた途端パスカルは立ち上がり、嬉しそうな顔で走り去っていった。



*ふたりの仲は非公開



10-04,19




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