何をどう気遣ったのか、シェリアとマリクに2人で買い出しに行けと言われ、ヒューバートはパスカルを連れて食材などの買い出しに出ていた。 「あ、弟君!あれおいしそう!!」 「パスカルさん、さっきから寄り道し過ぎです…」 店が有る度に足を止めるパスカルに、ヒューバートは吸い込んだ息全てを溜息に変えた。 パスカルと2人きりで買い出しに行かせたシェリアとマリクが憎らしい。後で愚痴でも聞かせてやろう。 「ほら、行きますよ」 「待ってよぉー」 先に歩きだすと、パスカルはこちらに向かい慌てて走り出した。 そんなに慌てて走って、転んだらどうするつもりなんだ。 ヒューバートは足を止め、注意を促そうとしたが――遅かった。 段差に足を引っ掛けたパスカルが盛大に転ぶのが見えた。 …注意が遅かったか。ヒューバートは何度目か分からない溜息を零しながらパスカルに近付く。 「大丈夫ですか?」 「痛ーい…」 だろうな。と、ヒューバートの表情が引き攣ったものに変わった。 (あれだけ派手に転んだら普通に痛いでしょう) これだから彼女は目が離せないのだ。 ヒューバートは買い出しで買った物を左手に持ち、空いた右手をパスカルに差し出した。 「立てますか?」 「…ん!」 何故か嬉しそうに笑ったパスカルがヒューバートの右手を握り返した。 彼女は男の手を借りて立ち上がると、軽く服に付いた砂を払い、ヒューバートの手を握ったまま歩き出す。 「パ…パスカルさん?」 「どーせだから手繋いで歩こうよ!」 「ど、どうして僕が貴方なんかと!!」 振り払う事は簡単だ。小柄な女性であるパスカルより男であるヒューバートの方が力は有る。 それでも彼の右手は麻痺した様に動かず、パスカルの成すままになっていた。 *手を繋ごう 10-04,03 Back |