※マリパス←ヒュ(キャラはパスカルとヒューバートしか出てこない)



「パスカルさん?」
宿谷の部屋から一向に出て来ないパスカルをヒューバートが心配して見に行けば、有ろうことか彼女は未だに夢の中だった。
マイペースなのも程々にしてくれと溜息を吐きながら、ヒューバートはベッドに眠るパスカルの肩を揺する。

「パスカルさん、朝です。起きてください」
「ばななぱい……」
意味が分からない。ヒューバートは頭を抱えながら、パスカルの寝顔を盗み見た。
寝顔までもが無防備だ。
就寝時はマフラーを外しているらしく、日に焼けていない白い肌が艶やかに露出している。

ヒューバートはもう一度だけパスカルの肩を揺すった。
相変わらず変な寝言が帰って来るだけで、パスカルに起きる気配は無い。
それなら、と。ヒューバートは白い肌に触れた。フェンデル生まれの白い肌は、普段から露出している鎖骨辺りでさえ白いのに、首辺りは余計にそ
うだ。
性的好奇心から少しだけ服を引っ張れば、普段は隠れているパスカルの胸上辺りに、真新しい虫刺されの様な赤みが残されていた。

ああ、これはきっとマリクさんが付けたんだ。
何故か一瞬でそう思った。此処までされて尚起きないパスカルが、少しだけ哀れにも感じる。

そうしてヒューバートは、白い首筋に両手を当てた。
今はまだ触れて居る程度の微弱な力だが、力を込めればパスカルの首が絞まるのは確実だろう。



(このまま力を込めれば)

僕だけを見たまま最期を向かえてくれるのだろうか。

‘マリク’ではなく僕の名前を呼んで逝ってくれるだろうか。


心の過剰な暴走から、ヒューバートは思わず少しだけ力を込めた。
だが直ぐに首から手を離す。
(分かってますよ)
こんなことをしても、貴方が手に入らない事ぐらいは。


「…おとー、と…くん…?」
一瞬とは言え首を絞めた所為だろうか。パスカルは目を擦りながらやっと起き上がった。

「朝ですよ、パスカルさん」


どうか、これ以上無防備にならないで。




次は本当に。
首を絞めてしまうかもしれない。





*愛される者の
(愛する者への



10-04,07




Back