※ED後妄想



大紅蓮石の設計が今どうなって居るのか確かめようとヒューバートがパスカルの部屋を訪れれば、彼女は突然自室から飛び出してきた。
「おおおおとーと君!!」
普段と似た様なテンションだが、どうやら慌てているらしい。
パスカルはヒューバートの腕に抱き着き、頬を赤く染めた彼を無視して自室を指差した。



「ゴキブリが出たー!!」

「…は?」

腕に縋る様に抱き着くパスカルは、やや涙目だ。ヒューバートは一瞬パスカルに目線を定めようとしたが―彼女が余りにも無防備過ぎるので―止
めた。

「…ゴキブリ、ですか」
改めて現状を整理する。
つまりパスカルの部屋にゴキブリが出て来て、それを見たパスカルが外まで出て来たと言うことだ。そこで、偶々やってきたヒューバートに出会っ
た。
てっきり自分を歓迎してくれたのだと思っていたヒューバートは酷く落胆した。
唯このままではいけないだろうと、仕方なくパスカルを連れて彼女の自室に侵入する。

(…寧ろ今までゴキブリが出なかった方が不思議です)
前に訪れた時より明らかに部屋が散らかっていた。何故今まで出て来なかったが本当に不思議だ。
近くに立てかけて合った蝿叩きを手に持ち、ヒューバートは部屋の中に足を踏み入れる。パスカルは入り口で足をすくませていた。
「何処に居たんです?」
「そ、その辺…」
指差された場所を軽く蝿叩きで漁ってみた。
だが一向にゴキブリは出て来ない。別の場所に逃げたのだろうか。

気を緩めた。瞬間だった。

目の前のごみ箱(らしき箱)から、ばさばさと羽音が聞こえてきた。

「うわぁあっ?!」
「ぎゃーす!!」

――2人して部屋から出て来たのは言うまでも無い。



「…弟君もゴキブリ、駄目?」
息を整えながら苦笑するパスカルに、ヒューバートは慌てて首を横に振った。
「そ、そんな訳無いでしょう!…少し驚いただけです」
強がりを吐いたが、実をいえばヒューバートもゴキブリは苦手だ。
7年前、兄の机下から沸き出したゴキブリに逃げ回った記憶が有る。更にそのゴキブリを掴んだアスベルが顔の近くまで押し付けてきたような…。
(…嫌なことを思い出してしまった)
結果的に余計に足が動かなくなってしまった。
蝿叩きを持って立ちすくむヒューバートと乱れた息を整えるパスカルは、端から見れば怪しい2人だ。

「何しているのよ」
そんな2人を見兼ね、声を掛けたのは偶々里に戻って来ていたフーリエだった。

この後事情を話したパスカルに「何時ものことね」と溜息を吐きながらゴキブリを撃退した彼女に、ヒューバートは敬意を隠せなかった。



*ある日の日常



10-04,15




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