※マリク目線



ある朝の事だ。
安眠から目覚めると、まるで何かの警告の様に頭痛が止まなかった。
ベッドから起き上がったものの頭痛に頭を抱えていれば、部屋にやってきたヒューバートが小首を傾げる。
「死にそうな顔をしていますが、大丈夫ですか?」
「…死にそうな顔、か」
確かにそうかもしれない。死にそうな程頭痛がする事をヒューバートに伝えると、彼は悩んだ表情を見せた末に呟いた。
「眠れば良くなるんじゃないでしょうか。気をつけてください。最近風邪とか流行ってますから」
先日、パスカルが風邪気味でシェリアから薬を受け取っていた事を思い出す。
もしかしたらパスカルから病気を貰ってしまったのだろうか。そう考えると何故か納得した。
「そうだな」
と、苦笑しつつヒューバートに返せば、彼はずれた眼鏡を直しながら言った。
「場合によっては大変な事になる事も有りますよ。皆さんには伝えておきますから。マリクさんは寝てください」
彼なりに心配してくれているのだろうか。
止まない頭痛の中で少しの安らぎを得た気がした。
「いいから、寝てくださいって」
死にそうな顔をしている。とヒューバートはさっき言っていたが、どうやら未だそういう顔をしているみたいだ。
余りにも心配してくるヒューバートの好意に答えようと、マリクは頷き再びベッドに潜り込んだ。

「すまないな。ヒューバート」
「いいですよ。別に」
そして部屋を出て行ったヒューバートを、目で見送った。
しんとなった部屋で暖かな会話を思い出す。


同時に気付いてしまった呪詛に、気付かなければ良かったと思った。

意図的にやられたのか。それとも偶然なのか…。
いや、恐らく前者だ。
暫くヒューバートとは距離を置くべきなのかもしれない。





*呪いの言葉



10-05,04


*解説(反転)
ヒューバートの台詞の最初の文字をを縦読みしていくと「死ねばいい」になります




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