「シェリア」
アスベルに名前を呼ばれたシェリアは振り返り、彼を見た。
用を聞こうとした瞬間、彼の指先がシェリアの頬に触れる。

(え…?)

高揚した頬に伝染し、心臓の鼓動が速まった。
アスベルは何時からこんな積極的になったのだろう。また教官に何か吹き込まれたのだろうか…??
頬を赤くしたまま固まっていれば、頬に触れていたアスベルの手が頬と同じ色をした髪に触れ、彼はシェリアの髪を指に絡める動作をした。
「あ、あああアスベル…?!」
動揺を隠せないシェリアが彼の名を呼んだ瞬間、アスベルはシェリアから手を引っ込めた。
はにかむ様に笑ったアスベルは、言葉を紡ぐ。


「髪、ゴミが付いてた」

「…へ?」

――見れば、アスベルの手には小さな粒の様なゴミが握られていた。

彼はそのまま何も無かったかの様に歩きだし、呆然としたままのシェリアに当たり前の様な笑顔を見せる。


「シェリア?どうかしたか??」

「…アスベルの……ばかぁああっ!!」


叫ばずには居られなかった。



*痛い勘違い



10-03,29




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