「お腹空いたわね…」 ぽつりと呟いたシェリアの言葉を、偶々アスベルは聞いていた。 服のポケットに手を入れた彼は、取り出したそれをシェリアに差し出す。 「ほら、やるよ」 シェリアの手に乗せられたそれは、ドットがプリントされた袋に包まれているミルク味の飴だった。 「あ、」 その時、シェリアの脳裏に懐かしい思い出が蘇った。 あれは7年前――ソフィに初めて出会った日の、数日前の話だ。 『おなかすいたー!!』 同じ言葉を零したシェリアに困った顔をしたアスベルとヒューバートの内、アスベルがドットがプリントされた包みを差し出した。 それをシェリアの手に握らせた少年はぼそりと呟く様に喋る。 『やるよ』 『…良いの?』 『ああ、余りだしな』 『…ありがとう…』 あの時貰ったミルク味の飴は、―思い人から貰った所為だろうか―今まで食べたどんな料理より美味しかった。 ――まさか此処で同じ種類の飴が出て来るとは。シェリアは思わず笑ってしまった。 「まだこの飴食べてたの?」 「良いだろ。大好きなんだから」 そっぽを向いてしまったアスベルに小さくありがとうと呟き、包みの中の飴を口に入れた。 *恋味ミルクキャンディー 10-04,01 Back |