「出来た!」


完成した指輪を握り締め、アスベルは歓喜の声を上げた。
「おめでとー」
同じ様に喜んだパスカルは買い出しで買ってきたラッピングの箱をアスベルに差し出す。
アスベルはそれを受け取り、手作りの指輪を箱に入れた。
「なんかプロポーズするみたいだねぇー!!」
「ばっ…茶化すなよ!!」
唇を釣り上げたパスカルに顔を赤くしたアスベルが首を力いっぱい横に振る。
そんなアスベルに意地悪気な笑みを浮かべるパスカルは、彼にもう1つ指輪を差し出した。
「アスベルが練習で途中まで作った奴、あたしが完成させちゃった」
だからアスベルに上げる、と言われ、アスベルは苦笑しながらそれを受け取る。
貰った指輪を指に嵌め、箱を持って部屋を出た。
日にちが早いが、出来れば早めにシェリアに渡したいとアスベルは思っていた。
彼女には7年前も現在も世話になっているのだ。そのお礼を考えれば、今渡したって大丈夫だろう。
部屋を出たアスベルは、シェリアの姿を探した。

「シェリアなら宿屋の裏だ」
そんな彼にマリクが話し掛ける。
「有難うございます」
シェリアが宿屋裏に居るのは教官が呼び出したからとは知らず、アスベルは宿屋裏に向かって走り出した。
後から部屋を出てきたパスカルが、教官の肩を叩く。
「渡しに行ったー?」
「ああ、行ったよ」
この後のアスベルのアクションとシェリアの表情を想像し、パスカルとマリクは思わず笑ってしまった。









「シェリア!」
宿屋裏の前で立っていた彼女に、アスベルは真っ先に話し掛けた。
「あ、アスベル!?」
マリクに呼び出された彼女はアスベルが来るとは全く考えていなかった為、驚きが隠せない。
そんな彼女にアスベルはリボンでラッピングされた箱を押し付けた。
「ちょっと早いけど…誕生日おめでとう、シェリア」
「え…わ、私に??」
戸惑いと嬉しさが見え隠れするシェリアは、両手で箱を受け取り、アスベルに了承を取ってから箱を開いた。
「パスカルに作り方を教えて貰って作ったんだ。ちょっと下手だけど…」
「…それでよくパスカルと一緒に居たのね」
ヒューバートの言う通りだったと、要らぬ心配をしていたみたいだと苦笑したシェリアは、箱から指輪を取り出し、ゆっくりと惜しむ様に指輪を嵌め
た。
「…ありがと、アスベル」
「ああ」
微笑んだ彼女の右指が、光に反射してきらりと光る。
不思議に思ったシェリアは彼の指を見て、顔を赤くした。
「アスベル…その指輪……」
「あ、これ?これは練習で途中まで作った奴何だけど……シェリアとお揃いになっちまったな」
微笑むアスベルに、シェリアは顔を赤くしながら俯いた。

お揃い。アスベルと。しかも指輪。
――考えただけでも幸せな気分になれる。
だが同時に恥ずかしい気持ちにもなり、シェリアは踵を返して逃げる様に走り出した。
「お、おいシェリア!!」
そんな彼女をアスベルが慌てて追い掛ける。
2人の指先は、お互いを思う様にきらりと輝いた。



*Happy Endを願う姫






10-04,05




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