「…はぁ、」
何度目か分からない溜息を吐いたが、自体が良くなる訳ではない。
シェリアは止まない雨を見上げながら店の屋根の下で立ち止まっていた。

食材の買い出しに来たのだが、途中で雨が降り出してしまい、身動きが出来なくなってしまったのだ。
雨は止む気配を見せず、シェリアは空模様と手に持つ荷物を何度も見合わせ再び溜息を吐く。
濡れて帰ることは覚悟出来ているが、食材が濡れるのは避けたい。
濡れて傷んでしまったりカビが出来てしまえば、折角買ったものが台なしだ。
「…やまないかなぁ」
そして結局立ち止まったままなのだ。ますます酷くなる雨に、流石に濡れて帰ることに決意を固めたその時。


「シェリア!」

駆け寄ってきた青年が居た。



「…アスベル?!」
「良かった。此処に居たんだな」
アスベルは何も言わずに持っていた荷物をシェリアの手から奪い、もう片方の手で支えている傘の中にシェリアを誘導した。
食材が濡れない様に注意しながら、アスベルとシェリアは雨の中1つの傘で歩き出す。

「シェリアがまだ買い出しから帰って来てないってソフィが教えてくれてさ。
どうせ傘持ってなさそうだし、迎えに行こうと思って」
「悪かったわね」
「や、別にそういう訳じゃ…!」
苦笑しながら首を横に振るアスベルに、膨れ面のシェリアは頬を膨らましながらも、直ぐにくすりと笑い出した。
「…ありがと…アスベル」
「……ああ」
雨も偶には良いかもしれない。荷物を抱えるアスベルを盗み見るシェリアはふとそんなことを思った。



*の日の杞憂






10-04,11




Back