※時期→青年期編が始まる前ぐらい ラント内を自由に散歩するのが、シェリアの唯一の楽しみだった。 幼い頃病弱だった体が奇跡的に回復し、こうして普通に歩いたり走ったり出来る。それだけで私は幸せなのだと感じれるのだ。 唯、もうずっと、ラント家には遊びに行っていない。 …行く意味が無いのだ。 ヒューバートはストラタに養子に出されて行き、アスベルはバロニアの騎士学校に行ってしまった。 ソフィはもう……。 (7年前に戻れたら…) あの楽しかった日々を取り戻すのは、もう不可能なのだろうか…。 俯き溜息を吐いた瞬間、シェリアの目に飛び込んできたのは小鳥だった。 何だか様子が可笑しいと思い近付いてみれば、羽が酷く傷付いている。 「…今、治してあげるわね」 祈る様に小鳥を手で包み、両手から溢れる光を翳した。 ――ある日突然備わった力だ。 やがて元気になった小鳥は、つぶらな瞳でこちらを一瞬見つめた後、空へ飛び立って行った。 …方角からしてバロニアだ。思わず両手を組んで祈った。 *Pray (どうか、私の思いがアスベルに届きますように) 10-04,16 Back |