※病んでるアスシェリ



「ゆーびきーりげーんまーん」

嘘吐いたら針千本飲ます…。
幼き日々の約束の歌を歌いながら、彼女はアスベルの口にスプーンを押し付けた。
押し付けたスプーンの中には彼女が作ったカレーが少々と、明らかに異質を放つそれが乗っている。

「アスベルが食べ易い様にしてあげたのよ?」

食べれるでしょう、と、彼女は笑顔を見せた。
死んだ目で笑う彼女にアスベルが悲鳴を漏らし、スプーンを手で弾く。
弾かれたスプーンは床に転がり、上に乗っていたカレーと、‘それ’が散らばった。

「何時も言ってるじゃない。好き嫌いは駄目だって」

手に持つ皿の上に在る、針山となったカレーを彼女は落ちたスプーンを拾い上げ、それで再び掬った。

指切り拳万。嘘吐いたら針千本飲ます。

彼女との約束を破った彼の為に、彼女はわざわざ千本の針を刺したカレーを作り上げて来た。
約束の歌を果たす為。

「7年前に言ってくれたじゃない。指輪、買ってくれるって」
赤い髪を揺らしながら、彼女は再びスプーンをアスベルに押し付ける。
既に部屋の壁際まで後退したアスベルに逃げ場は無い。


「指切りしたのに…」

抑揚の声に、アスベルの肩が震え上がる。
異質な彼女の放つ異質な言葉と特異な空気に、最早彼は何も言えなかった。

「ほら、手伝ってアゲル」
アスベルの口をこじ開けたシェリアは、その口に少量のカレーと大量の針を流し込んだ。



*果たされた約束
(指切りはゼッタイ)




10-04,22




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