時期→ウォールブリッジ地下遺跡



「パスカルさんは、ずっと一人で旅をされていたんだよね?」
不意にリチャードに話し掛けられ、振り返ったパスカルは小首を傾げながら頷いた。
「そーだけど…どったの?急に」
パスカルが問い返せば、やや目線を斜めに下ろしたリチャードがぽつりと呟く。

「…寂しく、無かったのかい?」

今にも消えてしまいそうな声だった。
唯パスカルはそれを受けても、普段と変わらぬトーンで会話を続ける。
「んー、寂しくは無いよ。街に居る人と話したりもしたし」
「…そうか」
リチャードは少しだけ微笑んだ。
その笑顔が何処か疲れている様で、パスカルは更に首を傾げる。

「ありがとう」
だが彼はそのままパスカルから離れて行った。
呼び止めて聞くことも出来たが、何故かそうしてはいけない気がし、パスカルは伸ばした手を静かに引いた。



パスカルから離れ、リチャードは少しだけ自嘲する。

「…君の様に前向きに物事を考えられれば、僕も少しは気が楽になるのかな」

その言葉を聞いたのは虚空だけだった。




*渇いた心





10-04,06




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