わぁ、と感嘆を述べて道端に咲いていた花に手を伸ばしたシェリアを、マリクは引き止めた。
「その花は触れるだけで毒が付く。止めた方が良い」
教官という立場に立って得た情報の一つだった。
その花は見た目こそ綺麗な物の、花びらには無数の毒を持っているのだ。

「え、そうなんですか?」
彼女は伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。そして遠巻きに毒花を見つめながら、残念そうにぽつりと呟く。

「綺麗な花なのに」
「…残念だったな」
シェリアの肩を軽く叩き、先に前を歩くアスベル達を追いかけて歩き出した。
気付いたシェリアが慌ててついて来る。少しアスベル達と離れてしまったが、問題のある距離では無い為このままにしておくことにした。
「やっぱり教官は凄いですね。私達の知らないこと、いっぱい知っているんだもの」
「そうでもない。今のも偶々知っただけだ」
そう答えるとシェリアは優しく微笑み、
「ありがとうございます、教官」
言葉を紡いだ。



「教官ー?シェリアー?」
遠くでパスカルが手を振っている。アスベル達3人もパスカルの傍で足を止めこちらを見ていた。
どうやら知らない間に距離が開いてしまっていたみたいだ。
「行きましょう、教官」
「ああ」
頷いた彼は、歩き出すシェリアを追いかける様にパスカル達のところまで歩いた。



*不浄なる調べ
(きっと一生言えないだろう)

(君に惚れているなどと)





10-04,18




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