※世界の中心の孤島のVSリチャード戦
※病んでるっつーかダーク




「君だけは殺せないんだ」
世界の中心で、男は出会って間もない頃の笑顔を浮かべた。
右手に剣を持つ男は馬乗りになって彼女を上から見下ろしている。
悲しむ男の瞳が涙を落とした。
彼女の頬に落ちたそれは彼女の頬を伝い、一体どちらが泣いていたのだろうと錯覚に捕われる。

震える唇から出て来た言葉はひとつだった。

「…どうして、あたし、なの?」

ずっと彼を見守って居たのはマリクだ。
7年前から一緒に居たのはシェリアとヒューバートだ。
7年前に友情の近いをしたのはソフィだ。
7年前から彼の親友でいたのはアスベルだ。


あたしには、彼と過ごした7年という月日は存在しないのに。
疑問は想像を掻き立てる。真実を求めた彼女に、男は寂しく笑うだけだった。
「わからない」

――深呼吸したパスカルが、目を開き、リチャードの右手の剣を掴む。
バランスを崩したリチャードが前に倒れてきた。王族の細い腰身に手を回し、その右手にリチャードの剣を忍ばせる。
「ね、リチャード」
男の瞳に相変わらず色は無かった。
「あたしだけは殺せない、って。さっき言ったよね」
「…ああ」

パスカルは再び深呼吸した。
そして柔らかく微笑み、左手で握り締めた右手を―――



「じゃあ、ふたりで死ねば良いと思う」



要らないの。
アスベルも、弟君も、シェリアも、ソフィも、教官も居ないこんな世界。
誰かにくれてやる。





―――パスカルの振り下ろした剣は2人の体を貫通させた。



*ふたりぼっち



10-04,18




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