※微裏
※↑という言葉で何処まで許されるか分からない人が書いた微裏






「ラクシュリ」
木の幹に凭れたまま月の見えない夜空を見上げるラクシュリにエクサは近付き腰を下ろした。
「んだよ」
面倒そうに振り返ったラクシュリの腕には、赤黒く変色した包帯が巻かれている。


――ほんの数時間前だ。
モンスターに遭遇したエクサ達だが、モンスターを殺さない主義の彼等は加減をして戦っていた。
勿論それはエクサとラクシュリも一緒で、2人は手分けして辺りのモンスターを気絶させていたのだが――。
「勇者!」
「エクサ様っ!!」
シーラとアンジェリカの叫んだ声。
エクサの背後には、一瞬の隙を付いたモンスターが集っていた。
危険信号を感じた瞬間、飛び出してきたラクシュリがエクサを抱え、一歩後ろに引き下がる。
――ラクシュリの右腕からは赤い血が流れ出していた。
「ラクシュリ…!!」
「…大丈夫。掠っただけだ」
そう言ってラクシュリは鞘を握り直したが、長年の付き合いからなのか…アンジェリカが様子が可笑しいと気付く。
だが気付いた時には遅く、ラクシュリの体は地面に崩れていた。
…攻撃に毒か何かが仕込まれていたのだ。動けず苦痛に顔を歪めるラクシュリは、モンスターにとって最大のターゲットだった。
シーラの横で声を上げたアンジェリカがロッドを片手に魔物の中へ飛び込む。だがそれより早く動いたエクサが、動けぬラクシュリを庇い手に怪我を
した。
「火炎-ファイア-!!」
飛び込んだアンジェリカが一体に術を放ち、漸くモンスターは撤退した。
駆け寄ってきたシーラがエクサの体調を確認するが、エクサの受けた傷は毒も麻痺も仕込まれて居なかった様だ。
だが、ラクシュリの疲弊は大きい。彼の身を案じたエクサ達は、今晩は此処で野宿をする事にした―――。




「…毒は抜けたか?」
「治療-ヒール-掛けてもらったし、ぼちぼちだな」
彼は力無く右手を振ったが、普段と比べれば余りにも弱々しい。
「…すまない」
頭を下げたエクサに、ラクシュリは右の頬を釣り上げた。
「お互い様だろ」
そう言って彼は再び虚空を見上げようとして――気付く。
地面に擦ったか何かだろうか。
エクサの指から、血が滲んでいた。

ラクシュリの目線に気付いたエクサも自身の指先を見つめ、ああと声を上げる。
「シーラに引っ掛かれた」
「なんだそれ」
くすりと笑い、ラクシュリがその指を掴んだ。
彼としては無意識の範疇なのだろう。
血の滲んだ指を口に加え、赤い雫を舐めとるラクシュリの表情は何故か妖艶に満ちていた。

「……」

舌を動かすラクシュリを暫く見つめていたエクサだが、ある瞬間何かを閃き、ラクシュリの加えている指を奥に突っ込んだ。
「ん…」
一瞬驚いた声を上げたラクシュリの口の中へ、二本目の指を投入する。
二本の指を奥へ奥へと突っ込んで行けば、ラクシュリは苦しそうな顔をした。
「…はぁ…っ…」
毒素が抜けきって居ないのか、ラクシュリの抵抗は薄い。舌を絡める力が弱くなり、吐息を漏らす彼の咥内へ、エクサは三本目の指を入れた。
「…ラクシュリ」
「っ…ふ……」
「…舌、動かしてくれ」
咥内で脱力しているそれを三本の指で持ち上げれば、ラクシュリは苦しそうな顔をしながら少しだけ舌を動かした。
ゆっくり舌を動かす彼だが、三本は入れすぎたか、唇から唾液が零れて行く。
それを別の手で掬い口の中へ運ぶ。

「ん…っ………けほ…っ…!!」
限界の様だ。ラクシュリが咥内から指を引き抜いた。
糸を引く唾液がなまめかしい。
木の幹を掴み、乱れた呼吸を直すラクシュリの顎を持ち上げ、エクサが顔を近づける。
「……!」
ラクシュリの体が痙攣する。
触れるだけでは赦さない。舌を無理矢理引き出す様なキスをした。


「っ…はぁ…はぁっ……」
唇を離せばラクシュリの体は脱力した様に木に凭れかかる。
ああ、どうして彼の表情はこんなにもそそられるのか。
彼の唾液の付着した指を、エクサはじっと眺めて微かに笑った。

「…なにしやがる……」
やっとの思いで振り出したラクシュリの声は余りに弱々しい。
「なんだろうな」
適当にはぐらかし、ラクシュリの体を引き寄せた。
最初抵抗していたラクシュリも直に意味が無い事だと理解したのか、何もしてこなくなる。腕力はエクサの方が上なのだ。
そんなラクシュリにエクサは優しく微笑んだ。



◎エゴイズム・シンドローム


10-08,18




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