※時期→無印8巻
※ラクシュリ視点




なぁクライヴ。
僕はやっぱり、無力のままみたいだ。



音速を越える鞭の動きを、始め僕は見抜けなかった。
素早さに自信は合ったが、何せ突然のことで、しかも相手は一度打ち負かしたモンスター。僕もエクサも完全に油断していたのだ。
その結果は散々だった。
僕を庇ったエクサの右腕は使いモノにならなくなり、せめてエクサだけでも逃がそうと彼を下水道に突き飛ばしたは良いが、僕は結局腹の深いとこ
ろにまで刃で斬られ、下で僕を待っていたエクサに支えられる形になった。


――手の健を切った。もう使いものにならないだろう。


―――二度と悪さ出来ないようにしてやる!


(…ああ)
それは時軸こ違うものの、ぼんやりと。だが確かに嵩張った僕の記憶。
…デジャヴュ、と言う奴だろうか。
幼き頃のクライヴと今のエクサ…皮肉にも状況はほぼ似ていた。
全ては僕が無力だったから起きたこと。
また僕は無力だったのだ。
また――誰かを傷つけた。


親友を、クライヴの右腕を傷付けてしまった時に決意したというのに。
もうあんな思いはしたくないと、血が滲む程唇を噛み締めたのに――!!

「…大丈夫か?ラクシュリ」
その時僕がどんな顔をしていたのかわからない。だがエクサの顔は明らかに僕を心配していた。
自分だって傷付いてるというのに…。

「…ごめん…」

守れなかった。
また無力だった。

「守り切れなかった…」

僕は二度も過ちを繰り返したのだ。
何時だって傷付くのは僕以外の誰かだ。

「捨てゴマにすらなれず…僕は「右腕」失格だ……」

何かを言いたそうなエクサの顔を見ながら、意識は深い深い闇へ沈んでいく。
なあエクサ。もう僕を捨てていってくれ。
君だけは生きて、アンジェリカ達の所へ――――。


一緒、体が宙に浮いた様な不思議な感覚に襲われ。
僕の意識は底無しの沼に沈んだ。







――片手だけでもお前を守れるさ。

ごめん。クライヴ。


――死んでも守るってヤツそんな風に簡単に言うな。

ごめん。エクサ。


僕は此処で終わるみたいだ。




*後悔の墓標
(届かない懺悔の花束を添えて)



10-08,16



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