※ラクシュリ視点!




「いてっ!」
失敗は何時も突然だ。
偶々今回は鞘を外して戦闘をしていたのだが、身幅を誤り鞘に剣を納めようとして指を切ってしまった。
鞘をしまい指と指の合間を確認する。

やっぱり切れてる。
指の合間からは鮮血が流れ出していた。

「ラクシュリ!」
1番傍に居たエクサが気付き、声を掛けてきた。
「大丈夫か?」
「…へーき」
こんな小さな傷1つにわざわざエクサに回復術を使わせたくはない。
だから舐めとけば治ると冗談を飛ばし、手の甲から流れる血液を舌で掬って舐めた。

うわ、苦っ。

自分でやっといて何だが思わずそんなことを思い、唇を離す。
「見せてみろ」
…今更平気だと言っても無駄だろうな。
渋々人血滴る左手を差し出せば、治癒を掛けられると思っていた左指に柔軟した何かが触れる。
「…っ」
それがエクサの舌だと気付くのに時間は掛からなかった。
次から次へと溢れる鮮血を彼は舌で掬い、指の間に舌を這わせる。

「っ……も…いいって…」
変に意識してしまい、エクサから指を離した。
「平気か?」
「だから平気だってば…」
今僕凄い顔してる気がする。
悟られない様そっぽを向いて歩き出せば、追い掛けてきたエクサに腕を捕まれ無理矢理振り返させられた。

「他に怪我してないか?」
「…ああ、うん」


エクサなりの優しさなのだろう。
分かってる。彼のソレは無意識なのだ。
可笑しいのは僕だ。

分かっているけれど。

「…無理はするなよ」
エクサは僕の頭を少しだけ撫でると、微笑した。
…咽から這い上がって来た感情を飲み込み、再び歩き出す。

僕は馬鹿か。なんでエクサに心音を高ぶらせないといけないんだ。
ほてった顔だけは見られない様、僕は俯きながらエクサのやや前を歩いた。



*秘枢センシビリティー




10-08,25




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