※ラクシュリ&ロッシが成人してるという予想前提





「ロッシちゃんはっけーん」
静寂に満たされた夜更けの寂れたバーテンダー。
グラスに注がれたワインを飲み干す彼女に、爽快な声と共に露出した肩に触れたのはロッシの良く知る男だった。
男は彼女の断り無く隣の椅子に腰を下ろすと、何を言う訳でもなく彼女の飲み干したワイングラスを見つめている。

「…何しに来たんだ?」
痺れを切らした彼女が問い掛ければ、ラクシュリは軽率に笑った。
「なんか眠れなくてさー」
そういうキミは、と。話題を振ってくる彼に、淡泊に返した。
「私だって息抜きしたい時も有る」
「…成る程」
頷いたラクシュリがワイングラスに残された数滴の雫に視線をずらした。
確かラクシュリは成人していたよな。
脳裏で事実を確認する彼女は、不意に滑稽な事を思い付き、テーブルの向こうでグラスを磨くマスターを呼び出した。

「Nicolaschikaを2つ」
ちょっとした余興だ。唇を緩ませれば、ラクシュリが不思議そうに彼女を見た。
「一杯だけなら奢ってやるよ」
「マジ?」
「ああ」
頷けば、今にも立ち上がりそうな勢いで彼が喜び出す。
そんなラクシュリにロッシは笑顔を向けるが、その笑顔が含み笑いである事を、奢りに浮かれたラクシュリは見抜けなかった。

マスターは2人分のワイングラスにブランデーを注ぎ、ニコラシカの特徴とも言える厚切りのスライスレモンをグラスの口に乗せた。

「どうぞ」
その上に砂金の様な砂糖が載せられ、出来上がったニコラシカの酒が並べられる。
横目にラクシュリを盗み見れば、―やはりと言うべきか―彼はグラスを見ながら呆然としていた。
ニコラシカは飲み方が特徴的なブランデーだ。最初は呆然となるのも無理はない。
予想通りの反応に満足した彼女はラクシュリを小突いた。
「飲み方、わかるか?」
「…全然」
大の大人だと言うのにワイングラスを前に硬直する彼は滑稽で、思わず笑ってしまった。

「どうすると思う?」
彼の表情と注がれたニコラシカを交互に見る。
硬直していたラクシュリはううんと唸り声を上げ、暫し悩んだ顔を見せた末に呟いた。
「…砂糖ごと中に沈める?」
「中身が飛び散るだろう」
ニコラシカはそんな簡単な飲み方では味わえない。
頭を悩ませるラクシュリは滑稽で面白いが、流石に可哀相にもなってきたので答えを教えてやった。
「砂糖を包むようにしてレモンを2つ折りにするんだ」
自分のグラスに置かれたスライスレモンで実践してやると、ラクシュリも直ぐにそれを真似した。
「畳んだレモンを口の中に入れて噛む」
喋りながらでは実践出来ないから、レモンを口に含むそぶりを見せる。
彼は純粋な子供の様に頭を上下に揺らすと畳んだレモンを口に入れた。
「それから注がれたブランデーを飲むんだ」
言わば、自身の咥内がミキサー変わりなのだ。妙な飲み方だが、ニコラシカの味は確かで、美味しい。
ラクシュリは言われた通りにブランデーを口に流し、それから口の中からレモンを取り出した。

「…難しい飲み方すんのね」
「味は最高だろう?」
ラクシュリを横目にロッシも2つ折りのレモンを口に含み、ブランデーを流す。
確かにと小さく呟いたラクシュリは、少しはニコラシカが気に入ったみたいだ。再びレモンを口に含み、ワイングラスを持ち上げて傾けた。



彼女の余興
(ニコラシカに情感を込めて)





10-08,27


みんなの歳が詳しく知りたい今日この頃。
ラクシュリは絶対成人してると思ってるんだけどロッシは微妙なんだよな…。



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