※ラクシュリ視点




わぁ、と歓喜の声を上げ、その花へ近付いたのはアンジェリカが最初だった。
「エクサ様、見てください!」
道端にひっそりと植えられたそれは鮮やかなピンク色をした花だった。
彼女の視線はそれに釘付けで、エクサとシーラも足を止め彼女が堪能するのを待つ。
「花って食えるか?」
「食べれません」
そんなやり取りをするエクサとシーラの横で、アンジェリカの見つめる花に近付いた。
見つめた花から不意に蘇った記憶。
――僕はこの花を知っている。

「…千日紅」
確かそう呼ばれていた花だ。
いつかクライヴが同じ様に道端に咲いたこれを見ながら、小さく呟いていた。
意味までは詳しく聞かなかったのだが、彼は落ち込んでた僕にこの花を送ってくれたっけ…。

「…花、詳しいの?」
アンジェリカの疑惑の声に我に返る。彼女は不思議そうな、意外そうな顔をして此方を凝視していた。
「…偶々その花を知ってただけだよ」
詳しいと言う程知っている訳じゃない。
あの頃僕はクライヴの与えてくれる情報と自分の身に起きる事が世界だったのだ。こんなに広い世界に、目も当てようとしなかった。
「…千日紅だな」
やがてシーラの隣に居たエクサが近付き、同じ言葉を呟いた。
やっぱりそうだったのか。
懐かしさに唇を噛み締めたと同時、アンジェリカが彼に花の意味を問う。
少し悩んだ顔を見せたエクサが、やがてぽつりと答えを呟いた。


「――…」

僕はその言葉に、クライヴに対する思いが何処かで爆ぜた気がした。

「…ラクシュリ?」
「……ああ、うん。何でもない」
落涙を零し掛けた瞳を乱暴に拭い、笑顔を見せる。
感傷的なのは昔からだ。特にこうなったのは、彼が癒えない傷を負ってからだが――…。

エクサに着いて行くと決めたあの日。
僕は町を出るまでとうとうクライヴには会えなかった。彼が今何処で何をしているかなんて、検討も付かない。
だけど次に巡り会えたなら。
僕も笑顔でこの花を送るだろう。



フラワー*メッセージ
(意味は確か…変わらない愛情だよ)



10-08,27



因みに千日紅には終わらない友情っていう意味もあります。まさにクララク向け。

頭が終わっててすいません。





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