※「貴方は私を自傷の沼へ、快楽と共に突き落とす」の続きになります。
※リタっちご乱心中(※病んでます)



相変わらずあの馬鹿は、ジュディスにちょっかいを掛けてエステルと笑い合っている。…偶に自分の方も向いて来るのだが、何故か近寄って来な
かった。
あたし、嫌われてんのかも。
そう思ったら胸が締め付けられる様に痛かった。
思い込みだと信じたい。だけどもし、おっさんは本気であたしを嫌ってたら……。


――痛みは痛みでしか癒せないのだよ。

不意にアレクセイのその言葉が蘇った。
痛みは痛みでしか癒せない。
信じてる訳じゃないが、妙に説得力がある。
気付いたら部屋に合ったカッターナイフを指に当てていた。痛い。痛くない?よく分からない。
宿屋の床に血が滴り落ちた。

綺麗、何て気が狂った事は思わないし、痛みを癒せた訳じゃない。
なのに、何故かまた刃物を指に当てていた。もう自分でも何がしたいか分からない。こんなの絶対に可笑しい、って知ってるけれど。



部屋の扉が開く音が聞こえた。
誰だろう、そう思った直後に男が自分の名前を呼ぶ。

「リタ!!」

ああ、ユーリか。
振り返った瞬間に、軽く叩かれた。やっぱりコレ、まずかったな。

「何してたんだよ」

右手首を持ちながらユーリが顔をしかめる。やっぱりそれについてで怒られた様だ。俯くしか無かった。
だって、あたしだって分からないんだから。――何でこんな事をしたのか、が。

ユーリに無理矢理洗面所まで連れて行かれた。
傷口を洗われて、それから宿屋に合った絆創膏で傷が塞がれる。右手中絆創膏だらけになった。苦笑する。


「何であんな事したんだ?」

傷の手当てをしながらユーリが再び聞いてきた。だから、それが分かってたらあたしだって苦労しないって。


「分からない」

そう答えるのが精一杯だった。
するとユーリが手を伸ばして、抱き締めて来る。彼の長い髪が肩まで掛かって来た。


「ま、無理に聞こうとは思ってねぇけどな」
「…じゃあ聞かないで」
「……はいはい」

ユーリが苦笑するのが見える。
彼はそれから言葉を続けた。


「あんま無理し過ぎて爆発すんなよ」
「分かってるわ」
「後、自傷は止めろ」
「……分かってる」

頷くと、ユーリが自分を腕から解放して笑った。
何をしに来たか分からないが、ユーリは立ち上がって部屋を出て行く。




何であんな事をした。

…何て、聞かれる程凄い事も起こってないんだけどね。

唯あたしの感情が可笑しくなってしまっただけ。
右手を胸の内に抱き締めながら、涙を零した。



*狂気と強欲と、儚い思い
(貴方が振り向いてくれない事が、悲しいの)



一応コレ片思いじゃなくてすれ違い。レイヴンはリタが嫌い何じゃなくて、好きだから照れて近付けないみたいな。
それを勘違いして嫌われてると思ったリタ。そんなお話。



08-08,29



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