理由も無く泣いたのは何時だっただろうか。


急に悲しくなって、胸が締め付けられるみたいに痛くなって。
ユーリ達に適当な嘘を吐いてその場を離れ、路地裏で膝を抱えて泣いた。
それでも胸のつっかえは取れなくて。
涙を無理矢理拭って仲間の方に戻って、無理を言って戦闘に参加させてもらった。

「大丈夫なのか?」

どうやらみんな、此処を離れたのは体調不良だからだと思っているらしい。
「平気よ」
何か声を掛けてくる彼等に、口々に言った。
中でもおっさんが一番しつこく聞いてきたけど、全部「大丈夫」と答えた。だって本当に大丈夫なのだから。
ただ、胸が痛いだけ。
窒息しそうな位苦しくて、時々体が軋む様に痛むだけ。

そうして居る間に敵はやって来て、直ぐに戦闘となった。
二軍はジュディスと犬とガキんちょ。
後ろから敵に近付かれない限り、ユーリ、エステル、おっさん、あたしの4人が攻撃を繰り返し続ける。



1回目の戦闘は余裕だった。
5回目の戦闘で少しふらついた。
8回目で目が霞んできた。
9回目でとうとう泣いた。何で、あたしってこうも駄目なんだろう。
それでも技を奮ってたら――気持ち悪くなって、詠唱を間違えた。


「無理すんな」

そう言って声を掛けてくれたのは弓を持つおっさんだった。
あたしの側に居ると云う事は、あたしを敵から守ってくれてるのだろう。あたしって本当に役立たず。
俯いたら涙が零れて来た。
視界がぼやける。
涙の所為だと思ったけれど――違った。
涙をこすっても視界が二重に見える。
気持ち悪いのが治らない。吐きたい。もう駄目だ…。

次の瞬間には吐いていた。
何回嘔吐しても気持ち悪い。
戦闘は終わっているのに、立ち上がる気力さえもない。

「リタ!!」

いち早く駆けつけて来たのはエステルだった。それからユーリ達も走って近付いてくる。
おっさんが背中をさすってくれた。
あたしは、泣きながら吐く事しか出来ない。…あたし、本当に役立たず。
気が遠くなる程吐いて、遂に胃液しか出て来なくなった。吐いた物をうっかりみてしまって、また嘔吐した。


「リタ」

あたしが泣いてるのを知ってか知らないでか、おっさんが声を掛けてきた。


「大丈夫だからね」

…何でそんな事を言うのよ。
でも言われてやっと気付いた。あたし、何時の間にか震えてた……。

二重になった視界が更にぐらつく。
地面が可笑しな色をしている気がする。認識しようとすると頭が痛い。

結局あたしは、おっさんの居る方にのぞける様に倒れ込んだ。




(こんな自分が、あたしは大嫌い)



*あたしはそうして、存在意義を探そうとしている


続きがあります→「そうして俺達は、無意味に傷つけ合う


08-09,17



Back