※「あたしはそうして、存在意義を探そうとしている」の続き
※レイヴン視点



「リタに何したんだよ」
目の前で怪訝そうな顔をする青年に、中年男もまた眉間に皺を寄せた。

「俺は何もしてない」
「リタがあんな風に泣く理由なんて、お前しか無いだろ」
痛い所を青年――ユーリに突かれた。
もしかしたら自分は、自分の知らない所でリタを傷付けていたんじゃないだろうか…。

倒れてしまったリタは、傍に有るベッドで眠っている。
自分とユーリ以外のメンバーは薬を探しに行ったり、医者を探しに行ったりした。部屋に居るのは自分とユーリだけだ。
――ベッドで眠るリタの顔色は随分良くない。具合が悪いのにずっと無理をしていたんだろう。こんな事になるのなら、早くリタを止めれば良かった
…。


やっぱり自分は、どこかでリタを傷付けてしまっていたのだろうか。





「リタは天才魔導士だ。
俺達より賢いし、精神だって俺の目から見ても達随分大人だと思う」

「…そうだね」

「けれどな。…リタはまだ15歳何だ。
どれだけ頭が良くたって、どれだけひねくれてたって――…。
…傷つきやすくて、弱いんだよ」

「……そう、だね…」


ユーリの言う通りだ。
リタはどれだけ天才と謳われて居ても、まだ15歳。色々悩む年頃だし、傷つきやすい年頃でもある。


俺はリタをどんな目で見ていたのだろう。
彼女の傷付く顔なんて見たくなかった筈なのに。




――…でも倒れる前のリタは、泣いていたんだ。
小さな体を震わせて、胃液を嘔吐しながら。…確かに、泣いていた。





「もう一度聞く。
――リタに何した」


「…多分、傷付けた」


俺が知らないだけで、
どこかで絶対。リタを傷付けた。



俯いた顔を上げた瞬間、ユーリに拳で殴られた。

「そうだよ、お前以外に考えられねえんだよ!!」

ユーリが珍しく敵意を剥き出している。…ああ。多分彼も、好きなんだろうな。小さくて儚い彼女の事が。
だから俺に敵意を剥き出すんだろう。


「俺はリタが幸せになる事を望んでた。
――あんたと居た時のリタは幸せそうだった。だからあんたにリタは譲ったんだ」

そうだね。――リタは元々ユーリと仲が良かったのに、俺が彼女をユーリから奪った。
けれどユーリが何も言ってこなかったのは、リタは怒ったりむくれたりしながらも…幸せそうに笑ったから。


けれど今は、
笑うどころか泣かせてる。


大切な彼女を。



「お前にリタを任せた俺が馬鹿だった」


…言い返す言葉も無い。
ユーリの言葉は真意だ。1%の嘘も含まれて居ない。
ユーリが舌打ちして、部屋を出て行った。――多分、エステル達の様子を見に行ったのだろう。まだ医者は見つからないのだろうか。
リタの方を見つめる事も出来ずに、俺もまた部屋を出た。




…あの時リタの様子を窺ってたら、
事態は少しでも良い方に傾いていただろうか?



*そうして俺達は、無意味に傷つけ合う


個人的におっさん仲間入りまではユリリタ・フレエス。仲間入り後はユリエス・レイリタって感じ。
それにしても私がSS書くと必ず昼ドラみたいな展開になる((

続きがあります→「私はきっと、此処に居てはいけない存在


08-09,21



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